日本大百科全書(ニッポニカ) 「メラピ火山」の意味・わかりやすい解説
メラピ火山
めらぴかざん
Gunung Merapi
インドネシア、ジャワ島にある活火山。現地では「ムラピ」と発音。ジャワ島中部、古都ジョクジャカルタの北方30キロメートルにある安山岩・玄武岩の成層火山。標高2911メートル。世界有数の活動的な火山で、山頂に形成された溶岩円頂丘(溶岩ドーム)が崩れて火砕流(熱雲)を発生する。この種の火砕流はメラピ型とよばれる。
メラピ火山では、このほかしばしば爆発が引き金になって火砕流が発生している。また、ラハールlaharとよばれる土石流や泥流が頻繁に発生する。これまで数千人の死者を出し西方約20キロメートルの寺院ボロブドゥールを火砕流・土石流堆積(たいせき)物で埋没させた1006年の大噴火を皮切りに、現在まで数年おきに噴火を繰り返してきた。死者は1672年に約3000人、1930年に約1400人など。1994年の噴火では、山頂の溶岩ドームが崩壊し、火砕流が7.5キロメートル流れ下り、43名が犠牲になった。2010年10~11月におきた大噴火では、爆発的な噴火で火砕流が発生し、山頂から17キロメートル流れ下った。噴火の進行とともに避難地域が拡大されたが、避難し遅れた約400名が犠牲になった。オランダ領時代、19世紀初頭から噴火観測の記録があり、インドネシアとしては火山観測・警報体制がもっともよく整備された火山であり、1970年代からハザードマップが整備され避難に利用されている。ジョクジャカルタにエネルギー鉱物資源省地質庁火山地質災害軽減センター(旧火山調査所)の火山研究観測技術センター(旧メラピ火山観測所)があり、山腹に5か所の観測所がある。似た名前の活火山マラピMarapi火山(標高2891メートル)がスマトラ島中部にある。
[諏訪 彰・中田節也]