水分を多量に含んだ泥質の細粒物質が斜面を流下する現象。地表の削剥(さくはく)作用、運動、堆積(たいせき)まで含めたマスムーブメントmass movementの一種である。運搬される岩屑(がんせつ)の大半が砂、礫(れき)などの粗粒物質からなる場合は、土砂流あるいは土石流とよんでいる。
細粒物質からなる植生の少ない不安定斜面、あるいは火山灰などで液性限界の低い物質からなる斜面に豪雨がもたらされて発生する場合や、山崩れ、地すべりを引き金として発生する場合がある。泥流のうちとくに火山活動に起因するものを分けて火山泥流と称している。この場合はその物質の分布の広がりや堆積(たいせき)物の層の厚さの大きいことから、しばしば大きな災害をもたらすことが多い。火山泥流は、噴火によってもたらされた火山砕屑物が降水の浸透により流動化する場合のほかに、火山活動によるカルデラ湖の決壊、雪氷の融解が引き金となることもある。火山泥流の例としては、日本では北海道の有珠(うす)山(1978)、長野県の浅間山(1783)が、また外国ではジャワ島の火山地域での例が著名である。火山泥流に相当するラハールlaharはジャワ島のこの地方の呼称が元になっている。
泥流の速度は運搬される砕屑物の性質や含水量、それに泥流の発生する地形条件によって異なるが、一般にきわめて速く毎秒10~40メートルに達する。細粒物質を主体とするとはいえ、密度が高いため、径数メートル以上、ときに数十メートルに達する巨大な岩塊が運搬されることがある。
[新藤静夫]
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mudflow ,mud flow
堆積物重力流の一種で,一般には泥質分を多く含んだ,したがって流体のマトリックス強度が比較的大きいが,粗粒な礫質分の含有量の少ない流れを指す。粗粒な礫質分を大量に運搬している場合には土石流と呼ぶことが多いが,礫質分の量に関係なく泥流と呼ぶこともあり,土石流との使い分けは必ずしも明瞭ではない。火山周辺における火山砕屑物を中心とする再堆積も(火山)泥流と呼ばれており,それは泥質分の含有量が高いとも限らない。インドネシアのラハールは,こうした火山体周辺における泥流を指す用語として広く知られている。古くは発生原因のよくわからない火山性の大規模な土砂移動に対して泥流という用語が使われた。
執筆者:徳橋 秀一・井上 公夫
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字通「泥」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…土石流中の水は川の水のように土石を流送する媒体として働いているわけではなく,土砂を含んで密度を増して岩塊を浮きやすくし,堆積物のすき間を埋め,重力によって流下する岩屑のいわば潤滑剤としての役割を果たしている。土石流は岩屑流とほぼ同義であるが,広義には岩屑が急斜面をなだれ落ちる岩屑なだれや,土砂を主体とした泥流を含めて,水を含んだ高速度の土石の流動現象全体をさすこともある。山崩れや岩屑なだれが途中から土石流に移行したり,土石流が泥流に変わることもある。…
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[急速な流動]
火山灰や砂,粘土など細粒の堆積物やそれらを多く含んだ岩屑層に,降雨,融雪,地下水の湧出,火山活動などで急に多量の水が加わると,速度の大きな斜面物質の流動が起こる。物質の性質と含水量の多少によって土砂流earth flow,泥流mud flow,土石流,岩屑なだれdebris avalancheに分けられる。いずれもその発生は一時的かつ偏在的である。…
※「泥流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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