日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤハズエンドウ」の意味・わかりやすい解説
ヤハズエンドウ
やはずえんどう / 矢筈豌豆
[学] Vicia sativa L. subsp. nigra Ehrh.
Vicia angustifolia L.
マメ科(APG分類:マメ科)の越年草。茎は他物に寄りかかって伸び、長さ1.5メートルに達する。葉は8~16枚の小葉をつけた偶数羽状複葉で、先端は三つに分かれる巻きひげとなって他物に絡む。小葉は狭卵形で長さ2~3センチメートル。托葉(たくよう)は深く2裂し、中央に1個の大形の蜜腺(みつせん)がある。3~6月、葉腋(ようえき)の短い総状花序に1~3花をつける。花は紅紫色で蝶(ちょう)形、長さ1.2~1.6ミリメートル。豆果(とうか)は広線形、長さ3~5センチメートルで無毛。黒く熟して裂開し、5~10個の種子を飛ばす。ユーラシアの暖温帯に広く分布し、日本では本州から沖縄の野原や道端の日当りのよい所に生える。名は、小葉の先が矢筈(やはず)状にくぼむものが多いことによる。カラスノエンドウとよぶことがあるが、同属のイブキノエンドウV. sepium L.もカラスノエンドウとよばれることがあるので、ヤハズエンドウとよぶほうがよい。
[立石庸一 2019年11月20日]