デジタル大辞泉
「やは」の意味・読み・例文・類語
やは[係助]
[係助]《係助詞「や」+係助詞「は」から》名詞、活用語の連用形・終止形、副詞・助詞などに付く。
1 反語を表す。…だろうか(いや、そうではない)。
「春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香―隠るる」〈古今・春上〉
2 疑問を表す。…(だろう)か。
「ほととぎす声も聞こえず山びこはほかに鳴く音をこたへ―せぬ」〈古今・夏〉
3 (「やは…ぬ」の形で)勧誘・願望を表す。…しないか。…しないかなあ。…してくれればいいのに。
「ここに―立たせ給はぬ(=オ立チニナリマセンカ)」〈源・葵〉
[補説]12は文中でも文末でも用いるが、文中にある場合、文末の活用語は連体形で結ばれる。→かは →や
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
や‐は
(係助詞「や」「は」の重なったもの)
[一] 文中にあって文末を連体形で結ぶ。
① 疑問・反語の意を表わす。
※古今(905‐914)雑体・九四八「世中はむかしよりやはうかりけんわが身ひとつのためになれるか〈よみ人しらず〉」
※
源氏(1001‐14頃)
桐壺「われ人に劣らむとおぼいたるやはある」
② 「やは…ぬ」の形で勧誘や希望の意を表わす。→
補注(1)。
※古今(905‐914)春下・八二「ことならば咲かずやはあらぬさくら花みる我さへにしづ心なし〈
紀貫之〉」
[二] 文末にあって疑問・反語の意を表わす。
※
万葉(8C後)九・一七八三「まつがへりしひてあれ八羽
(やは)三栗の中のぼり来ぬ麿といふ奴」
[補注](1)(一)②の
用法は、形の上では打消・疑問だが、意味は希望や勧誘で、その点一種の反語である。
(2)(一)(二)いずれの場合も反語の意の用法が
大半で、疑問の例は極めて少ない。特に文末のものは単純な疑問と思われる例がない。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報