日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユカタヤマシログモ」の意味・わかりやすい解説
ユカタヤマシログモ
ゆかたやましろぐも / 浴衣山城蜘蛛
spitting spider
[学] Scytodes thoracica
節足動物門クモ形綱真正クモ目ヤマシログモ科に属するクモ。家屋内の縁の下、押入れ、長い間使用しない引出しの奥などにすむ。6眼の淡褐色の5~8ミリメートルほどの腹部のずんぐりした丸いクモで、歩脚は細くて弱々しくみえる。腹部に数対の褐色斑紋(はんもん)のあることからユカタの名がつき、日本では山城国(京都府)で最初にみつかったのでヤマシログモという。腹端の出糸突起から糸を出すことはほかのクモと変わりはないが、餌(えさ)の小動物をとらえるとき口から糸を吐きかけてからめとるので、外国ではツバハキグモとよばれる。この口から吐く糸物質は、本来は毒腺(どくせん)の毒液であったものが変化したもので、体外に出ると糸状になる。小さい虫が近づくと急にこれを吐きかけて身動きできないようにする。糸をかけられた虫が急に動けなくなるのは、糸の粘性だけでなく、糸に毒物質が含まれていると考えられる。世界共通種で温帯地方に広く分布する。
[八木沼健夫]