日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユーロ6」の意味・わかりやすい解説
ユーロ6
ゆーろしっくす
EURO6
ヨーロッパ連合(EU)が2014年に施行した自動車の新たな排出ガス規制。EU指令に基づき、自動車から排出される二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物(NOX)、粒子状物質(PM)などの有害物質の上限値を定めている。EU域内で自動車を販売するすべての自動車メーカーに適用され、基準を満たさないと域内で車を販売できない。2014年9月から施行した第1段階(EURO6b)と、2017年9月からの第2段階(EURO6c)の2段階で実施される予定である。ヨーロッパでの自動車排出ガス規制は1991年に施行したユーロ0以降、ユーロ1、ユーロ2と順次規制が厳しくなり有害物質の低減に寄与してきた。ユーロ6第1段階には、ディーゼル車が排出する窒素酸化物について、1キロメートル走行当りの排出上限値を従来の180ミリグラムから80ミリグラムへ強化し、ガソリン車なみの環境基準とした。EU域内では、2014年9月以降に発売されるすべての新車に適用され、既存車も2015年9月以降に登録される車に適用された。ユーロ6第2段階では、粒子状物質について、排出重量だけでなく粒子数に関しても厳しい基準を適用する。ドイツ自動車会社フォルクスワーゲンの排出ガス不正問題発覚後、ユーロ6の検査時と実際の走行時の排出数値に大きな差があることが知れわたったため、ユーロ6第2段階では、実際の走行時の数値も規制対象とするRDE(real drive emissions)規制が導入される。
ユーロ6をクリアするには、新型エンジン開発や排出ガスを分解する後処理装置の装備などが必要なため、ユーロ6をクリアした新車の売行きが伸びるなどの経済効果がでている。一方で、基準をクリアできないためディーゼル車関連部門から撤退する自動車関連メーカーもでている。この排出ガス規制はヨーロッパだけでなく、多くのヨーロッパ車が走行する中国、インド、ロシア、韓国などでも排出ガス基準として採用されており、これらの国々は順次ユーロ6を導入する見通しである。なおユーロ6と並ぶ厳しい排出ガス規制には、日本の平成22年排出ガス規制(ポスト新長期規制)や、カリフォルニア州のZEV規制などがある。
[矢野 武 2016年6月20日]