改訂新版 世界大百科事典 「ヨベル書」の意味・わかりやすい解説
ヨベル書 (ヨベルしょ)
Book of Jubilees
旧約聖書偽典中の一書。モーセがシナイ山で神から契約の石板を受け取った際に,天使が彼に語り聞かせた天地創造からその時点までの歴史を内容とする。《創世記》1章から《出エジプト記》12章までの聖書の記述を,民間伝承,エッセネ派的解釈を加えながら敷衍(ふえん)したもの。1年364日(52週)からなる太陽暦を唯一神聖な暦とし,1ヨベル=7週年=49年とし世界史を49ヨベルに分け,天地創造を元年とする絶対年代の中に歴史をはめ込む。またクムラン教団と共通する太陽暦による祭日厳守を強調する。クムラン教団の愛読書に数えられていた本書は,前2世紀後半にヘブライ語で記されたが,完本としてはギリシア語訳からの重訳によるエチオピア語訳のみが残存。
執筆者:土岐 健治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報