ライトモティーフ

百科事典マイペディア 「ライトモティーフ」の意味・わかりやすい解説

ライトモティーフ

示(指)導動機と訳す。R.ワーグナー楽劇標題音楽において,人物や事物,あるいは状況や想念概念を表現,象徴する音楽動機(断片的旋律)。ワーグナーの友人で《バイロイト誌》の編集主幹H.vonウォルツォーゲン〔1848-1938〕が,《ニーベルングの指環》論(1876年)で用いたもので,ワーグナー自身は〈基礎主題Grundthema〉〈予感動機Ahnungsmotiv〉などと呼んだ。これはベルリオーズの〈固定楽想〉の発展であり,ワーグナー以後もR.シュトラウスなどのオペラ,また交響詩の分野で活用されている。これに類似した技法歌舞伎などの日本近世の演奏芸術にもある。

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改訂新版 世界大百科事典 「ライトモティーフ」の意味・わかりやすい解説

ライトモティーフ
Leitmotiv[ドイツ]

歌劇など劇的な声楽標題音楽において,登場人物や事物(剣,城など),概念(愛,死など)などを表現,象徴する動機。示(指)導動機と訳す。1871年にイェーンスFriedrich Wilhelm Jähns(1809-88)が提唱した語で,ウォルツォーゲンHans von Wolzogen(1848-1938)の《ニーベルングの指環》論(1876)において,初めてワーグナーの楽劇との関連で論じられた。ワーグナー自身はライトモティーフの語を否定したが(彼の用語では〈基礎主題Grundthema〉〈予感動機Ahnungsmotiv〉など),この手法は物語の劇的・心理的展開の手段としてきわめて効果的に活用されている。これはベルリオーズの〈固定楽想idée fixe〉をさらに発展させたものであるが,同様の手法は素朴な形ながら既に初期の歌劇から認められ,必ずしもワーグナーの独創ではない。この概念と手法は,後の作曲家のみならず,トーマス・マンら文学者にも大きな影響を与えた。
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世界大百科事典(旧版)内のライトモティーフの言及

【モティーフ】より

…長大な作品ではいくつものモティーフの複合もみられるが,その際には〈中心モティーフ〉(しばしば作品の理念と目される)と〈副次モティーフ〉を区別する。また同一作品で表現上の目的から一定モティーフが反復して用いられるとき,音楽の用例にならって,これを〈ライトモティーフLeitmotiv〉(ドイツ語。示導動機)という。…

【モティーフ】より

…長大な作品ではいくつものモティーフの複合もみられるが,その際には〈中心モティーフ〉(しばしば作品の理念と目される)と〈副次モティーフ〉を区別する。また同一作品で表現上の目的から一定モティーフが反復して用いられるとき,音楽の用例にならって,これを〈ライトモティーフLeitmotiv〉(ドイツ語。示導動機)という。…

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