改訂新版 世界大百科事典 「ラグランジュの平衡点」の意味・わかりやすい解説
ラグランジュの平衡点 (ラグランジュのへいこうてん)
Lagrangian points
三体問題の特別な場合として,1個の天体の質量が無視できるほど小さくて,さらに他の2個の天体が共通重心のまわりに円運動を行うとき,共通重心を原点としてx軸上につねに2天体がのるような回転座標系を考えると,x軸上の3個の点および2天体とともに正三角形をなす2個の点は平衡点となる。つまり質量0の第三天体はそこで静止を続けることができる。これは1772年にJ.L.ラグランジュによって見つけられた解で,これらの点をラグランジュの平衡点という。とくに後の2点を正三角形平衡点(正三角形解)という。円運動を行う2天体の質量比が約1/26より小さければ正三角形平衡点は安定である。太陽系には,太陽と木星とで正三角形をなすトロヤ群小惑星がある。1980年に発見された土星の第12衛星は,土星とディオーネと正三角形をなしている。
執筆者:木下 宙
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報