日本大百科全書(ニッポニカ)「円運動」の解説
円運動
えんうんどう
質点が平面上の一つの円周上を回る運動のこと。 のように円運動では、速度の方向が各瞬間で円の接線方向であり、中心からの位置ベクトルの方向といつも直交している。したがって円運動を行っている物体では、絶えずその速度の向きが変化していて、速度の時間変化すなわち加速度が存在する。ニュートンの法則によって、円運動をしている物体にはこの加速度を生じさせている力が外から作用しているはずである。一定の速さvで回る等速円運動の場合、加速度ベクトル
は、いつも中心に向かっているので、向心加速度とよばれ、それに比例する(質量mを比例係数として)外力もまた中心に向いている。その大きさは、ベクトル図を参考にして容易に求められ、角速度をωとすれば、mvωである。円軌道の半径をrとすると、v=rωの関係を用いて、mv2/rで表される。これを向心力または求心力という。
このように、物体に円運動を続けさせるためには、絶えず向心力を作用させなければならない。たとえば、「おもり」を「ひも」で結び、回転させると、「おもり」は絶えず中心から遠ざかろうとするが、これに抗して円運動を続けさせるためには、絶えず「ひも」を引っ張っていることが必要である。これは「ひも」を通じて向心力を作用させていることになる。なお、中心から遠ざかろうとする傾向は見かけの力、遠心力が働いていると考えることができる。もちろん向心力としては、かならずしも「ひも」を用いて引っ張る必要はない。ニュートンの万有引力や、プラスとマイナスの静電気をもつ粒子の間に働くクーロン力でもよい。これらの力のもとで物体は一般に放物線、双曲線または楕円(だえん)軌道上を運動する。円運動は楕円軌道の長軸と短軸とが等しい場合である。実際、万有引力の作用のもとで運動している太陽系の惑星は、太陽の周りの円に近い楕円軌道上を運動していることが知られている。また人工衛星は、月と同様、地球の引力の作用のもとでの円に近い楕円軌道上の運動をしている。
[阿部恭久]