イタリアの作曲家ドニゼッティの三幕オペラ。イギリスの作家W・スコットの小説『ラマムアの花嫁』に基づくS・カンマラーノの台本による。17世紀のスコットランドを舞台にした悲劇で、精神に異常をきたしたヒロインに扮(ふん)する歌手が声と技巧を聞かせる「狂乱オペラ」の代表的名作である。ストーリーは、領主エンリーコに父を殺され、城も奪われたエドガルドは彼を仇敵(きゅうてき)とねらうが、たまたまエンリーコの妹ルチアの危難を救い、愛し合うようになる。ところがエンリーコは妹の政略結婚を画策し、エドガルドが不実な男であるとルチアに思い込ませ、ルチアは誤解したまま悲嘆に暮れて政略結婚を承諾する。結婚式の場にエドガルドが現れ、逆にルチアの不実を責めるが時すでに遅く、その夜ルチアは精神に異常をきたして花婿を刺し、自らも死ぬ。それを知ったエドガルドも自刃して果てる、というもの。第二幕の「狂乱の場」はソプラノの聞かせどころとしてとくに名高い。単に「ルチア」と題されることもある。1835年ナポリで初演。日本初演は1918年(大正7)原信子(のぶこ)歌劇団による抄演。
[三宅幸夫]
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