リクトル(その他表記)lictores

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リクトル」の意味・わかりやすい解説

リクトル
lictores

古代ローマのインペリウム (命令権) を有する政務官神官の付き人。エトルリア起源といわれ,ローマ王政期から存在。いくつかの 10人組で組織され一定の給与を受け,毎年新しく任命された。下層市民が主で,通例解放奴隷であり常に政務官らに従い,先触れ,通行整理,身辺警備,職務遂行の際の実務を行なった。政務官の種類によりその人数は異なり,執政官 (コンスル ) は 12人,独裁官 (ディクタトル ) は 24人,法務官 (プラエトル ) は6人 (ローマ市内では2人) のリクトルをそれぞれ有した。ファスケスを携行し,通例トガを着用,凱旋式には赤い上着 (サグム) ,葬儀には黒衣を着た。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「リクトル」の意味・わかりやすい解説

リクトル
lictor

古代ローマの下僚。先導警吏と訳す。命令権をもつ公職者を先導し,職務執行の便宜を図る。コンスル(執政官)に12名,プラエトルに6名が定数で,斧の柄に棒を束ねたファスケスfascesを各自左肩に担い(民会では下ろす),命令権の峻厳を明示し,現実に逮捕,杖罰,斬首の命令を執行した。後に属州総督,ウェスタ女神の女祭司に,帝政期には元首の守護霊の祭祀役にも同行した。なおファスケスはファシズム(全体主義)の語源
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリクトルの言及

【コンスル】より

…前509年の共和政成立以降,毎年2名が選ばれたという。ケントゥリア民会の選挙後,コンスルはクリア民会でインペリウムを受け,先導リクトルの斧と棒に生殺与奪の大権を示しつつ民政,軍事,祭祀,民会・元老院の開催等,国政全般を主導した。下位公職者への干渉権,市民懲戒の強権も帯びながら在任中は弾劾を免れ,元老院,護民官の掣肘と1年任期,同僚制の厳守が専制を防いだ。…

※「リクトル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android