デジタル大辞泉
「元首」の意味・読み・例文・類語
もと‐くび【元首】
首の根もと。また、頭。
「冑のしころより―まで鋒五寸ばかりぞ打ち込みたる」〈太平記・一四〉
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げん‐しゅ【元首】
- 〘 名詞 〙
- ① 国の首長。国家の統治者。君主。天皇。
- [初出の実例]「猶不レ師二往古一、何救二元首望一」(出典:懐風藻(751)述懐〈文武天皇〉)
- 「万国の元首則(すなはち)かしらで、人体で譬やうならば額の処」(出典:古道大意(1813)下)
- [その他の文献]〔書経‐益稷〕
- ② 国際法上、外部に対して一国を代表する資格を持つ国家機関。君主国では君主、共和国では大統領。
- [初出の実例]「天皇は国の元首にして統治権を総攪し」(出典:大日本帝国憲法(明治二二年)(1889)四条)
- ③ 年のはじめ。〔晉書‐律歴志中〕
もと‐くび【元首】
- 〘 名詞 〙
- ① 首の根もと。また、そこから上の頭。
- [初出の実例]「冑のしころより本頸(もとクビ)まで鋒(きっさき)五寸計ぞ打こみたる」(出典:太平記(14C後)一四)
- ② 元凶。張本人。
- [初出の実例]「あのもとくびがしなしぞ。ただなかとをさん」(出典:本福寺跡書(1560頃)東山大谷殿破却之事)
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元首
げんしゅ
chief of state
国家を外に向って一般的に代表する資格をもつ機関。元首の公的行為はすなわち国家の行為であり,その行為の効果は国際法上国家に帰属する。そのような行為の主要なものとして,外交官や領事官の派遣と接受,条約の締結,宣戦および講和などがあげられる。元首は国家の威厳を代表する者として,外国に滞在する場合には,儀礼,不可侵権 (名誉,身体,住居など) ,治外法権 (裁判権,警察権,課税権からの免除) など,広い特権を享有する。歴史的には,国家有機体説に基づいて,主権者にして行政権のにない手であるという背景において対外的に国家を代表する君主を国家の頭になぞらえるところから生じたものであるが,君主制の衰退に伴い,行政権の首長にして条約締結権その他の対外的代表権をもつものを,さらには対外的代表権に局限してその資格をもつものを元首と考えるようになった。ある国においてどの地位にある者が元首の資格をもつかは通常憲法で定められている。明治憲法下の天皇は本来の元首といえ,憲法でも天皇を「国ノ元首」と規定していた。しかし日本国憲法下でだれが元首かは必ずしも明確ではない。日本国憲法上条約締結権や外交関係を処理する機能は内閣にある (73条2,3号) から,元首は内閣ないし内閣の代表権をもつ内閣総理大臣ともいえるが,天皇も全権委任状,信任状の認証,批准書その他の外交文書の認証および外国の大使・公使の接受をなし (7条5,8,9号) ,その限り国を代表する機能を果しており,諸外国も天皇を元首扱いしている。
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元首 (げんしゅ)
head of the state
有機体としての国家の首部だとか,国家権力の全能者という元首の観念はほとんど歴史的役割を果たし終え,今日では,通例,対外的に国家を代表する地位にある国家機関をいい,条約の締結,外交使節の任免,全権委任状・信任状の発受などの外交権能を伴う。元首を,君主のように世襲によるものとするかどうか,合議機関(例,旧ソ連邦最高会議幹部会)とするかどうか,また実質上行政の首長として国政を統轄するものとするかどうかは,それぞれの国の憲法の定めるところによる。明治憲法では天皇は〈国ノ元首〉(4条)として統治権を総攬したが,日本国憲法では天皇は主権者・統治権者としての地位から象徴の地位に変わり,対外面でも全権委任状・信任状,批准書その他の外交文書の認証,外国の大公使の接受など限られた国事行為を行うにとどまる。したがって,天皇を元首とみることは困難で,むしろ外交関係の処理や条約締結の実権をもつ内閣が元首的地位に近いといえるが,それも決定的ではない。元首条項を排除している国民主権の憲法の下であえて元首を求める意義自体が問われよう。
執筆者:高野 真澄
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元首
げんしゅ
head of the state 英語
Staatsoberhaupt ドイツ語
一般には国の首長を意味する。この元首という概念は、国家を生物に例えた場合(国家有機体説)その頭の部分にあたることから由来した。したがって元首とは、対外的にその国を代表する地位と権限をもつ者のことであるが、国内的には統治権や行政権をもつ者を元首とよぶ。普通は君主国における君主、アメリカ合衆国のような共和国における大統領が元首にあたるが、旧ソビエト連邦の最高会議幹部会(その議長が元首として扱われることもあった)などのように合議体が元首である場合もある。では、日本国憲法のもとでの元首とはだれか。明治憲法では第4条において「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬(そうらん)スル」と明記されていたが、現憲法では元首を定める規定がないためさまざまな見解が主張されている。学説の大多数は、条約の締結権や外交使節の任免権のほか一般に外交関係を処理する権限をもつ内閣を元首とみるか、あるいは行政権の首長として内閣を代表する内閣総理大臣を元首とみなしている。しかし最近では、対外的に国家を儀礼的に代表する権限をもつだけで十分とし、国家の名目的・儀礼的な象徴の地位にある者を元首的性格をもつ者とみる考え方も出てきた。この場合には天皇が元首であるということになろう。
[田中 浩]
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元首【げんしゅ】
国の首長。国内的には統治権,少なくとも行政権を掌握し,対外的には国を代表する権能をもつ。通常,条約締結,外交使節の任免・接受,軍隊の統帥などの権能をもつ。外国滞留中は外交特権をもつ。君主国では君主,共和国では大統領。合議機関が元首の機能を果たすことがあるが(日本の内閣),元首は独任機関であるから,この場合は元首とはいわない。
→関連項目儀仗兵|共和制|自治領|大勲位
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普及版 字通
「元首」の読み・字形・画数・意味
【元首】げんしゆ
君。また、年の初め。主君。〔漢書、丙吉伝賛〕經(書、益稷)に謂ふ、君を元首と爲し、臣を股肱(ここう)と爲すと。其の一體、相ひ待ちてるをらかにするなり。字通「元」の項目を見る。
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