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有機体としての国家の首部だとか,国家権力の全能者という元首の観念はほとんど歴史的役割を果たし終え,今日では,通例,対外的に国家を代表する地位にある国家機関をいい,条約の締結,外交使節の任免,全権委任状・信任状の発受などの外交権能を伴う。元首を,君主のように世襲によるものとするかどうか,合議機関(例,旧ソ連邦最高会議幹部会)とするかどうか,また実質上行政の首長として国政を統轄するものとするかどうかは,それぞれの国の憲法の定めるところによる。明治憲法では天皇は〈国ノ元首〉(4条)として統治権を総攬したが,日本国憲法では天皇は主権者・統治権者としての地位から象徴の地位に変わり,対外面でも全権委任状・信任状,批准書その他の外交文書の認証,外国の大公使の接受など限られた国事行為を行うにとどまる。したがって,天皇を元首とみることは困難で,むしろ外交関係の処理や条約締結の実権をもつ内閣が元首的地位に近いといえるが,それも決定的ではない。元首条項を排除している国民主権の憲法の下であえて元首を求める意義自体が問われよう。
執筆者:高野 真澄
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一般には国の首長を意味する。この元首という概念は、国家を生物に例えた場合(国家有機体説)その頭の部分にあたることから由来した。したがって元首とは、対外的にその国を代表する地位と権限をもつ者のことであるが、国内的には統治権や行政権をもつ者を元首とよぶ。普通は君主国における君主、アメリカ合衆国のような共和国における大統領が元首にあたるが、旧ソビエト連邦の最高会議幹部会(その議長が元首として扱われることもあった)などのように合議体が元首である場合もある。では、日本国憲法のもとでの元首とはだれか。明治憲法では第4条において「天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬(そうらん)スル」と明記されていたが、現憲法では元首を定める規定がないためさまざまな見解が主張されている。学説の大多数は、条約の締結権や外交使節の任免権のほか一般に外交関係を処理する権限をもつ内閣を元首とみるか、あるいは行政権の首長として内閣を代表する内閣総理大臣を元首とみなしている。しかし最近では、対外的に国家を儀礼的に代表する権限をもつだけで十分とし、国家の名目的・儀礼的な象徴の地位にある者を元首的性格をもつ者とみる考え方も出てきた。この場合には天皇が元首であるということになろう。
[田中 浩]
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