リンデマン機構(読み)リンデマンキコウ

化学辞典 第2版 「リンデマン機構」の解説

リンデマン機構
リンデマンキコウ
Lindemann mechanism

F.A. Lindemannが1922年に提案した単分子反応に関する反応機構.当時,化学反応は分子間の衝突によって起こるのだから,反応速度は衝突する分子の濃度の積に比例すると考えられていた.そのため,濃度の一次に比例する反応では,ふく射を吸収して反応するという,ふく射説が台頭していた.しかし,次のような考察から,衝突による活性化でも,見掛け上,一次反応になることがLindemannによって示された.いま,反応分子をMとし,Mどうしが衝突して反応を起こす活性分子 M* をつくるとする.ただし,M* には寿命があり,寿命の間にほかのMと衝突すると,もとに戻ってしまうとする.

したがって,次の微分方程式が成立する.

いま,この反応系ではMが十分に供給されていて,全体の反応が定常的になっているとすると,[M*]は定常濃度になる.すなわち,

d[M*]/dt = 0
とおくことができる.両式から[M*]を消去すると,

が得られる.もし,

k-1[M] ≫ k2
ならば,

d[P]/dt ≅ (k1k2/k-1)[M],
すなわち,一次反応になる.一方,もし

k-1[M] ≪ k2
ならば,

d[P]/dtk1[M]2
すなわち,二次反応になる.当時発見されていた気相の一次反応が,低圧にすることによって二次反応になることが確かめられ,リンデマン機構の正しさが証明された.単分子反応速度理論の出発点になった.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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