改訂新版 世界大百科事典 「一分子反応」の意味・わかりやすい解説
一分子反応 (いちぶんしはんのう)
unimolecular reaction
反応の分子数で化学反応を分類するとき,1個の分子Aだけが関係する形式の素反応A-→B(Bは生成物)をさす。単分子反応ともいう。反応は,Aが活性化され,それが単独に分解してBになる機構で進む。したがって反応速度式はv=k[A],すなわちAについて一次になる。典型的な一分子反応には,過酸化物の熱分解やシクロプロパンの開環などがある。
(CH3)3C-O-O-C(CH3)3
2(CH3)2CO+C2H6
有機化学反応では,一分子反応は一次反応とほとんど同じ意味に用いられる。たとえば反応
(CH3)3CBr+H2O─→(CH3)3COH+HBr
(CH3)3CBr─→(CH3)3C⁺+Br⁻
であり,反応速度式はv=k[(CH3)3CBr]となる。この反応は一分子求核置換反応(SN1反応)である。このほか,脱離・付加反応などにも同じ意味で一分子反応機構で進むものがある。同様にして反応次数が二次であるような有機化学反応を二分子反応ということが多い。
執筆者:竹内 敬人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報