日本大百科全書(ニッポニカ)「作図不能問題」の解説
作図不能問題
さくずふのうもんだい
指定された器具を有限回用いて、与えられた条件を満たす図形を描く問題を作図問題という。目的の図形が実際描けるときに、作図可能問題というが、現実に図形は存在するのに、指定された方法では描けないとき、作図不能問題という。定規とコンパス、またはその一方だけを用いて平面図形を描く問題はユークリッド以来、たくさん考えられてきたが、定規とコンパスを用いる作図不能問題では次のギリシアの三大作図不能問題が有名である。〔1〕角の三等分問題、〔2〕立方体倍積問題(デロスの問題ともいう)、〔3〕円積問題。
〔1〕は、与えられた角θに対しθ/3を作図する問題で、cosθ=4cos3(θ/3)-3cos(θ/3)に注意するとa=cosθを与えて
(1) 4x3-3x-a=0
を満たすxを作図する問題になる。
〔2〕は、与えられた立方体の体積を2倍にする問題で、
(2) x3-2=0
を満たすxを作図する問題になる。定規とコンパスで作図できる点の座標は、与えられた体K(〔1〕では有理数とaを含む最小の体、〔2〕では有理数体)上2のべき次の拡大体の元であることと、(1)、(2)がK上既約な三次式であることから、作図不能が示される。これはワンツェルPierre-Laurent Wantzel(1814―1848)によって1837年に証明された。
〔3〕は、与えられた円と同じ面積をもつ正方形を定規とコンパスで作図できるか、という問題で、1882年リンデマンC. L. F. Lindemann(1852―1939)はπの超越性を証明して、これが作図不能であることを示した。このような幾何学的問題が代数的な考察によって解決されることはきわめて興味深い。
また、定規とコンパスで正n角形が作図できるのは、n=2sp1p2……ptで、p1, p2,……, ptは相異なるpi=2hi+1の形の素数のときで、かつ、そのときに限ることが知られている。
[菅野恒雄]