リン酸鉄(読み)リンサンテツ

化学辞典 第2版 「リン酸鉄」の解説

リン酸鉄
リンサンテツ
iron phosphate

二価および三価鉄のオルトリン酸塩および二リン酸塩が知られている.【】(オルト)リン酸鉄(Ⅱ)および(オルト)リン酸鉄(Ⅲ):
(1)(オルト)リン酸鉄(Ⅱ)(iron(Ⅱ) (ortho)phosphate);Fe3(PO4)2(357.48).(オルト)リン酸第一鉄(ferrous (ortho)phosphate)ともいう.天然には,ラン鉄鉱(vivianite)として産出する.鉄(Ⅱ)塩溶液とリン酸塩溶液との反応により得られる.暗緑色の一水和物,無色の六水和物,および青白色の八水和物が知られている.もっとも一般的なものは八水和物で,単斜晶系結晶.密度2.58 g cm-3.常磁性で,水に不溶,酸に可溶.空気中で酸化されて青色になる.水素塩としてFeHPO4nH2O(n = 1,2),Fe(H2PO4)2・2H2Oが存在する.[CAS 14940-41-1].
(2)(オルト)リン酸鉄(Ⅲ)(iron(Ⅲ) (ortho)phosphate);FePO4(150.82).(オルト)リン酸第二鉄(ferric (ortho)phosphate)ともいう.天然には,ストレング石(strengite),コニンク石(koninckite)などとして産出する.鉄(Ⅲ)塩溶液とリン酸またはリン酸水素二ナトリウム溶液との反応により得られる.二水和物は淡赤色の単斜晶系.密度2.87 g cm-3.水に不溶,塩酸硫酸に可溶,硝酸に不溶.140 ℃ で水を失う.このほか2.5水和物,四水和物などが知られている.塩化鉄(Ⅲ)の黄色水溶液に過剰のリン酸を加えるとホスファト錯体が生成し,無色になる.水素塩としてFeH3(PO4)2・2H2O,Fe(H2PO4)3・2H2Oなどが存在する.[CAS 10045-86-0:FePO4][CAS 13463-10-0:FePO4・2H2O][CAS 31096-47-6:FePO4・4H2O]【】二リン酸鉄(Ⅱ)および二リン酸鉄(Ⅲ):
(1)二リン酸鉄(Ⅱ)(iron(Ⅱ) diphosphate);Fe2P2O7(285.63).ピロリン酸鉄(Ⅱ)(iron(Ⅱ) pyrophosphate),二リン酸第一鉄(ferrous diphosphate)ともいう.鉄(Ⅱ)塩溶液に二リン酸ナトリウムを加えると得られる.白色の粉末.三斜晶系結晶.空気中で容易に酸化されて褐色になる.粉乳,そのほかに,鉄分の補強剤として用いられる.
(2)二リン酸鉄(Ⅲ)(iron(Ⅲ) diphosphate);Fe4(P2O7)3(745.21).ピロリン酸鉄(Ⅲ)(iron(Ⅲ) pyrophosphate),二リン酸第二鉄(ferric diphosphate)ともいう.鉄(Ⅲ)塩溶液に二リン酸ナトリウムを加えると得られる.淡黄色の粉末.水に不溶,無機酸アンモニア水に可溶,酢酸,塩化アンモニウム溶液に不溶.このほか,水素塩として淡赤色のFe2H6(P2O7)3が知られている.鉄分補強剤,触媒,合成繊維などの非ハロゲン系防炎剤の原料などとして用いられる.[CAS 10058-44-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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