ロシア・中央アジア圏の新潮流(読み)ろしあちゅうおうあじあけんのしんちょうりゅう

知恵蔵 の解説

ロシア・中央アジア圏の新潮流

オイルマネーを背景として、ロシアは再び大国としての自信を取り戻した。貿易黒字によって、外貨準備高が2500億ドルを超え、対外債務前倒しで返済できるまでになった。この経済面での好調を背景に、民主主義人権など欧米と同じ価値観を共有する国になるとの方向を転換、ロシアには独自の道があるとし、欧米との関係が冷え込んでいる。 CIS(独立国家共同体)は、グルジアモルドバなどロシアから離れようとする国と、ウズベキスタンのように、ロシアに接近する国など、参加国の立場はばらばらで、ますます形骸化している。このCISに代わって、ユーラシア経済共同体やCIS集団安全保障条約などを基礎とし、ロシアを中心とした新たな共同体が形成されつつある。 中央アジアでは、ウズベキスタンの政策転換が注目される。カリモフ大統領は長年ロシアから距離を保つ政策をとってきたが、近年急速に経済大国になったロシアに接近した。上海協力機構への加盟に続いて、2006年にはCIS集団安全保障条約にも復帰した。また、9.11事件後、米軍駐留を認めたが、2005年には米軍を同国から撤退させた。 資源大国として経済力に自信を見せるロシアであるが、これは石油天然ガスによるものであり、経済システムが順調に機能している結果ではない。腐敗汚職は蔓延し、06年前半、資金国外流出は国外からの流入の2倍になっている。

(袴田茂樹 青山学院大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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