日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローツェ山」の意味・わかりやすい解説
ローツェ山
ろーつぇさん
Lhotse
ネパール・ヒマラヤのネパールと中国チベット自治区との国境にそびえる世界第4位の高峰。エベレスト山の南東3キロメートルに位置する。エベレスト山にもっとも近い主峰(8516メートル)に続いて、東へ延びる尾根伝いに中央峰(8426メートル)、東峰(8383メートル)が並ぶ。中央峰は一般に高度順位表から除かれている。古くはインド測量局番号でE1の無名峰であったが、1921年、初めてエベレストに派遣されたイギリス隊が、東のカシュン氷河からこの山を発見し、チベット語でローツェ(南峰)と命名した。これはエベレスト山の南にあることからつけられたもので、同じく北にそびえるチャンツェ山(北峰、7553メートル)にあやかったのである。なお東峰は現在ローツェ・シャール(シャールは東の意)とよばれている。主峰は1956年、スイス隊(隊長A・エグラーAlbert Eggler)が南面のサウス・コルから初登頂に成功した。東峰は70年、オーストリア隊(隊長S・エーベルリ)が初登頂を果たした。エベレスト山と同じ系統の泥岩層に属する。
[金子史朗]
『A・エグラー著、横川文雄訳『雲表に聳ゆる峯々』(1958・朋文堂)』▽『高橋和之著『ダンプさんのエベレスト日記 ローツェから厳冬のエベレストへ』(1985・朝日新聞社)』▽『トモ・チェセン著、近藤等訳『孤独の山 ローツェ南壁単独登攀への軌跡』(1998・山と渓谷社)』