日本大百科全書(ニッポニカ) 「ワカウツボ」の意味・わかりやすい解説
ワカウツボ
わかうつぼ / 和歌鱓
Wakanoura moray
[学] Gymnothorax meleagris
硬骨魚綱ウナギ目ウツボ科に属する海水魚。千葉県以南の太平洋岸、八丈島、小笠原(おがさわら)諸島、南鳥島、台湾などの太平洋・インド洋に分布する。体は細長く、側扁(そくへん)する。尾部は後部でよく側扁する。脊椎骨(せきついこつ)数は116~130。頭は小さく、全長は頭長の7.4~8.1倍。全長は躯幹(くかん)部(胴部)長の3.2~3.5倍。吻端(ふんたん)はとがる。上下両顎(りょうがく)はすこし湾曲する。前上顎骨板の中央部の歯はおよそ3列で鋭い。主上顎骨の歯は2列に並び、内列歯は外列歯より細長い。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は主上顎骨歯より小さく、鋤骨の歯列の長さは主上顎骨の歯列の長さより短い。背びれは鰓孔(さいこう)の上方の前方から始まる。体は小豆(あずき)色の地に、不定形の黒色や白色の斑紋(はんもん)がある。体色は変化に富むが、これらの斑紋が見られない個体もある。尾端部は白く縁どられても、内部まで侵入しない。口内は一様に白くなく、体と同じような斑紋がある。最大体長は約50センチメートル。沿岸の岩礁域やサンゴ礁域にすみ、おもに魚類、甲殻類などを食べる。ハナビラウツボに似るが、本種は口内が一様に白くはないこと、体の斑紋が白くて真円形でないこと、尾端の白斑が前方に伸びること、中形種で全長は50センチメートルほどにしかならないことなどで、ハナビラウツボと区別できる。
[尼岡邦夫 2019年11月20日]