ワモンチョウ

改訂新版 世界大百科事典 「ワモンチョウ」の意味・わかりやすい解説

ワモンチョウ (輪紋蝶)

鱗翅目ワモンチョウ科Amathusiidaeに属する昆虫総称,またはそのうちの1種を指す。この仲間には裏面に眼状紋をもった種類が多いのでこの名がある。インド,オーストラリア地域の熱帯に栄えており,約100種が知られている。系統的には南アメリカのモルフォチョウ科にもっとも近いとされている。小さいものでは開張6cm前後,大型のものでは17cmにも達する。なかには,ルリツヤワモンチョウ属Zeuxidiaのようにモルフォチョウを思わせるような青紫色の輝きをもつもの,メダマチョウ属Taenarisのように後羽の表面に1個の大きな眼状紋を現すもの,ワモンチョウ属Stichophthalmaのように裏面に眼状紋の長い列が現れるものなどがある。

 熱帯の薄暗い森林やタケ林にすみ,早朝または日没後のたそがれの中を活動するものが多く,この点ではフクロウチョウ科やジャノメチョウ科に近い。花を好まず,落果や樹液などに集まる。台湾のワモンチョウS.howquaは開張9~11cm。タケの切株にたまった水に群集するという。食草はヤシ科,バショウ科など。幼虫の尾端は二分し,ジャノメチョウ科などとの類縁を示す。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ワモンチョウ」の意味・わかりやすい解説

ワモンチョウ
Stichophthalma howqua formosana

鱗翅目ワモンチョウ科。前翅長は雄 50mm,雌 55mm内外。雄の翅表の地色橙黄色で,前翅は翅端部と外縁の細帯,その内側の波状帯,さらにその内側に並ぶ5個の菱形紋は黒褐色である。後翅は前翅に似るが外縁の細帯は不明瞭,しかし内側の波状帯と菱形紋は大きい。裏面は表面より赤みを帯び,中央部および基部に屈曲する2黒色帯が走り,前翅ではこの2帯間の前縁近くに短い1黒色条がある。前後翅ともこの中央黒色帯の外側に5個の眼状紋が並び,外縁にはさらに3黒褐色帯がある。一方雌では全体に赤みが弱く,特に裏面は白色を帯びる。台湾に産するが,別亜種が中国中部から西部に産する。

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世界大百科事典(旧版)内のワモンチョウの言及

【チョウ(蝶)】より

…ジャノメチョウ科と近縁で,幼虫は単子葉植物(たとえばバナナなど)を食べる。(6)ワモンチョウ科 東洋区やオーストラリア区の熱帯に分布する大型または中型のチョウで,成虫は夜明けと夕方に活動し主として森林内にとどまる。系統的にはジャノメチョウに近く幼虫が単子葉植物を食べるのも共通している。…

※「ワモンチョウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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