改訂新版 世界大百科事典 「モルフォチョウ」の意味・わかりやすい解説
モルフォチョウ
鱗翅目モルフォチョウ科Morphidaeに属する昆虫の総称。系統的にはワモンチョウ科にもっとも近いとされているが,ジャノメチョウ科やタテハチョウ科などにも近縁である。南アメリカおよび中央アメリカの熱帯に栄えており,約80種が知られている。青色の金属光沢をもつ大型種の多いことでよく知られている。
成虫の大きさは開張7cm前後のポルティス・モルフォMorpho portisから20cm以上のヘクバ・モルフォ(タイヨウモルフォ)M.hecubaまでさまざまで,翅の面積に比べて胴の長さが極端に短いのが大きな特徴である。翅の裏面に眼状紋がよく発達している点ではジャノメチョウ科に似ており,翅脈はワモンチョウ科に近い。
おもな生息地はアマゾン川水系一帯に広がる広大な熱帯多雨林であるが,なかには淡青色や真珠色に強く輝くスルコウスキー・モルフォM.sulkowskyiのように,アンデス山脈の標高2000~3000mくらいの高地帯に見られ,低木を混じえた明るい草原にすむものもある。同じ産地でも種によって飛ぶ高さが異なり,たとえばコロンビアのレティシア付近では,アキレスM.achilles,メネラウスM.menelausなどの種は地上1~2mの林間陽地を飛ぶが,小型種のアドニス・モルフォM.adonisは高い樹冠の上を飛び,なかなか下に降りてこない。飛び方もいろいろで,パトロクルスM.patroclus,デイダミアM.deidamiaなどはかなり速く飛ぶが,ロドプテロンM.rhodopteron,アドニスなどは緩やかで,高いところを青色の銀紙が舞うような不安定な飛び方をする。成虫は花を好まず,マンゴーなどの落果に集まるものが多い。
幼虫には黄色,桃色,紫色などのはでな色彩をもつものが多く,刺激されると酸性物質を分泌して身を守るという。食樹は主として双子葉植物で,マメ科,コカノキ科,ツヅラフジ科など。ヘルクレス・モルフォM.herculesの幼虫は赤褐色で体長8cmにも達し,ときに800頭以上からなる大群をつくることがある。小型種エーガ・モルフォM.aegaの幼虫はタケ科を食べてジャノメチョウ科との生態上の類縁を示す。
執筆者:高橋 真弓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報