ワルトブルクの歌合戦(読み)ワルトブルクのうたがっせん(その他表記)Der Wartburgkrieg

改訂新版 世界大百科事典 「ワルトブルクの歌合戦」の意味・わかりやすい解説

ワルトブルクの歌合戦 (ワルトブルクのうたがっせん)
Der Wartburgkrieg

チューリンゲンワルトブルク城にまつわるドイツの詩人伝説。中世後期以来,年代記,聖人伝等に語り継がれ,グリム兄弟の《ドイツ伝説集》にも収録される。R.ワーグナーの楽劇《タンホイザー》によって一般に知られるが,伝説の原型は,ウォルフラムを崇拝する亜流詩人たちによって13世紀中ごろないし後半に作られたと推定される中世ドイツ語の論争詩に由来する。チューリンゲン方伯ヘルマンHermann von Thüringenをたたえる詩人たち(ウォルフラム,ワルター・フォン・デル・フォーゲルワイデ,ラインマルReinmar von Zweter,ビテロルフBiterolf,書記)を相手に,ハインリヒ・フォン・オフターディンゲンがひとりオーストリア公レオポルトを称賛して敗れる前編を〈君主賛美〉,クリングゾルKlingsorのかける宗教上のなぞをウォルフラムが次々と解いて勝利を収める後編を〈なぞかけ〉,両者を合わせて〈ワルトブルクの歌合戦〉と呼ぶが,これは19世紀以降に研究の便宜上つけられた表題である。本作品のテキスト批判,解釈には未解決の問題多く,その成立事情は,オフターディンゲンの素姓と同様なぞに包まれている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のワルトブルクの歌合戦の言及

【オフターディンゲン】より

…中世ドイツの伝説的詩人。この人物の登場する最古の作品は中世ドイツ語の論争詩《ワルトブルクの歌合戦》の前編〈君主賛美〉で,その冒頭に本作品の詩形の創案者として紹介されている。客観的伝記資料は皆無であるが,それは他の多くの中世ドイツ詩人の場合も同様であるから,この場合に限って架空人物と見なす理由はない。…

【チューリンゲン】より

…次のルートウィヒ3世敬虔侯は,57年皇帝フリードリヒ1世のイタリア遠征に随行し,ハインリヒ獅子公との関係決裂にさいしては皇帝を助け,また第3回十字軍に参加して,90年帰途キプロスで死んだ。そのあとを弟のヘルマン1世Hermann I(1155ころ‐1217)が継ぐが,彼は文芸愛好の君主として知られ,ドイツ中世吟遊詩人の代表者であるワルター・フォン・デル・フォーゲルワイデ,ウォルフラム(エッシェンバハの)などが彼の宮廷のあるアイゼナハを訪れ,13世紀半ばに成立した長編抒情詩《ワルトブルクの歌合戦》は,中世チューリンゲン文化の全盛期をしのばせるものがある。13世紀初頭の方伯ルートウィヒ4世Ludwig IV der Heilige(1200‐27)は,ハンガリー王の娘,聖エリザベートと結婚したが,皇帝フリードリヒ2世に従って第5回十字軍に出征し,オトラントで死去した。…

※「ワルトブルクの歌合戦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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