改訂新版 世界大百科事典 「ワルトブルクの歌合戦」の意味・わかりやすい解説
ワルトブルクの歌合戦 (ワルトブルクのうたがっせん)
Der Wartburgkrieg
チューリンゲンのワルトブルク城にまつわるドイツの詩人伝説。中世後期以来,年代記,聖人伝等に語り継がれ,グリム兄弟の《ドイツ伝説集》にも収録される。R.ワーグナーの楽劇《タンホイザー》によって一般に知られるが,伝説の原型は,ウォルフラムを崇拝する亜流詩人たちによって13世紀中ごろないし後半に作られたと推定される中世ドイツ語の論争詩に由来する。チューリンゲン方伯ヘルマンHermann von Thüringenをたたえる詩人たち(ウォルフラム,ワルター・フォン・デル・フォーゲルワイデ,ラインマルReinmar von Zweter,ビテロルフBiterolf,書記)を相手に,ハインリヒ・フォン・オフターディンゲンがひとりオーストリア公レオポルトを称賛して敗れる前編を〈君主賛美〉,クリングゾルKlingsorのかける宗教上のなぞをウォルフラムが次々と解いて勝利を収める後編を〈なぞかけ〉,両者を合わせて〈ワルトブルクの歌合戦〉と呼ぶが,これは19世紀以降に研究の便宜上つけられた表題である。本作品のテキスト批判,解釈には未解決の問題が多く,その成立の事情は,オフターディンゲンの素姓と同様なぞに包まれている。
執筆者:岸谷 敞子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報