アタラ(読み)あたら(英語表記)Atala

デジタル大辞泉 「アタラ」の意味・読み・例文・類語

アタラ(〈フランス〉Atala)

シャトーブリアン小説。1801年刊。1802年刊行の「キリスト教精髄」の第3部にも収められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アタラ」の意味・わかりやすい解説

アタラ
あたら
Atala

フランスの作家シャトーブリアンの中編小説。1801年刊。『ルネ』(1803)とともに『キリスト教精髄』(1802)の一部をなすが、独立して発表される。アメリカ先住民ナッチェスの盲目となった長老シャクタスが養子ルネに若き日の恋を物語る。敵の部族に捕らえられたシャクタスは、首長(しゅちょう)の娘として育てられていた混血児アタラと相愛の仲となり、彼女とともに荒野に逃れるが、アタラはキリスト教徒で純潔の誓いをたてていたため、シャクタスへの愛とこの誓いとの間で悩み、毒を仰いで死ぬ。副題の「荒野の二人の未開人の恋」の情念とその悲劇を軸に、異国情緒豊かな北米の大自然と先住民の生活、オーブリー神父の布教の聖書的情景とキリスト教の偉大さ、主人公たちのメランコリー、愛と宗教の葛藤(かっとう)などが描かれたこの作品は、当時の古典的文学状況下で批評家たちの間に賛否両論の大論争を巻き起こしたが、その文体の叙情的かつ絵画的な美しさで、後のロマン派への道を開く先駆的な作品として評価され、フランス文学史上の一大記念碑となった。

[田部井玲子]

『『アタラ・ルネ』(辻昶訳・旺文社文庫/畠中敏郎訳・岩波文庫)』

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世界大百科事典(旧版)内のアタラの言及

【シャトーブリアン】より

…92年,帰国して反革命軍に投ずるが,負傷してロンドンに亡命。1800年,フランスに帰り,《アタラ》(1801)および《キリスト教精髄》(1802)を発表した。前者は,北米大陸の自然を背景にインディアンの悲恋を描き,後者は主として美的な立場からキリスト教を擁護したものである。…

※「アタラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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