キリスト教精髄(読み)キリストきょうせいずい(英語表記)Le génie du christianisme ou beauté de la religion chrétienne

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キリスト教精髄」の意味・わかりやすい解説

キリスト教精髄
キリストきょうせいずい
Le génie du christianisme ou beauté de la religion chrétienne

フランスのロマン主義作家フランソア・ルネ・ド・シャトーブリアンの著作。 1798年フランス革命のなかで書きはじめられ,1802年4月,国家と教会が和解したときを待って公刊された。 18世紀の哲学者たちの宗教への風刺に対し,宗教は美であり偉大さの源であること,文明は根本的にキリスト教的であり,キリスト教が生を人間的にするものであることを主張。それぞれ6編を含む4部から成る。第1部の教義と理論は世界の美から信仰に向うまったく詩的な神の存在証明を試みる。第2部のキリスト教詩論では『神曲』や『失楽園』などが論じられ,古代と近代の詩を比較して史的評論のさきがけとなった。第3部の芸術と文学ではゴシック教会建築論やパスカル論のほか廃虚の詩情が語られる。第4部の礼拝では鐘,祈願祭に関する部分が有名。特にこの著作のなかで有名なのは第2部に挿入された『アタラ』 Atalaと『ルネ』 Renéで,それぞれ 01年,05年に独立の作品として発表され,著者の代表作となっている。『キリスト教精髄』は大成功収め護教論としての有効性は一時的なものであったが,文芸評論史学 (中世への関心) ,美術論 (ゴシック芸術の評価) の面でかなりの影響を残した。

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