化学辞典 第2版 「アノマー」の解説
アノマー
アノマー
anomer
糖がヘミアセタール環を形成することによってカルボニル炭素原子が不斉となり,その結果生じる二つのジアステレオマーをアノマーという.たとえば,代表的なアルドースであるD-グルコースは水溶液中で鎖状のアルデヒド形では存在せず,分子内で六員環(ピラノース),あるいは五員環(フラノース)のヘミアセタール環を形成している(前者が主生成物).その際,新しく生成したヒドロキシ基が,鎖状のフィッシャー投影式の末端の(番号の大きい)不斉炭素上のヒドロキシ基とシスの関係にある異性体をα-アノマー(α-anomer),トランスの関係にあるものをβ-アノマーとよぶ.α形では,六員環のものはα-D-グルコピラノース,五員環のものはα-D-グルコフラノースである.これらはアルデヒド形を経由して,相互に平衡関係にある.ヒドロキシ基がアルコキシ基に置換されたグルコシド類では,これらの異なる環形の異性体をそれぞれ単離することができ,糖鎖中の環形は三文字記号([別用語参照]アルドース)にα,β(必要ならば,ピラノース(p),プラノース(f)をつける)を追加して示される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報