D-グルコース(読み)グルコース

化学辞典 第2版 「D-グルコース」の解説

D-グルコース
グルコース
D-glucose

C6H12O6(180.16).略称Glc.ブドウ糖,デキストロースともいう.代表的なアルドヘキソース.もっとも分布が広い単糖である.また,多糖類,配糖体,そのほかの構成成分となっているものも含めれば,地球上もっとも多量に存在する有機化合物である.緑色植物により二酸化炭素と水から光合成される.遊離の状態では,ハチミツや熟した果実にとくに多いが,ほとんどすべての植物組織中に多かれ少なかれ含まれているほか,血液,リンパ液,糖尿病患者の尿中に存在する.また,多くのオリゴ糖類やデンプンセルロースグリコーゲンなどの多糖類,大部分の配糖体の構成成分である.普通は,デンプンやセルロースの加水分解によって得られるが,化学的にも合成されている.結晶として得られるのは,α-およびβ-ピラノース形だけであり,水中での組成は,α-ピラノース37.3%,β-ピラノース62.6%,β-フラノース0.1%,直鎖アルデヒド0.002% となる.α形は融点146 ℃(無水物).+112→+52.7°(水).β形は融点148~150 ℃.+18.7→+52.7°(水).水に易溶.甘味がある.変旋光をはじめ還元糖としての一般的な性質をすべて示す.pK1 12.34.フェニルヒドラジンと反応し,ヒドラゾンおよびオサゾンを与える.グルコシドエーテルエステルグルコサン,グルカールなど,多数の誘導体が天然あるいは人工的に知られている.酸化によりD-グルコン酸D-グルカル酸を,還元によりD-ソルビトールを与える.D-グルコースは種々の生物のエネルギー源で,グリコーゲンに合成され蓄えられている.また,さまざまな微生物により発酵されるので,アルコール,乳酸,グルタミン酸,抗生物質など有用な有機化合物の合成に利用される.また,甘味剤,医薬用(ブドウ糖注射液など),ビタミンC合成原料,そのほかに大量に利用されている.LD50 25800 mg/kg(ラット経口).L-グルコースはL-アラビノースから化学的に合成されている.[CAS 50-99-7]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のD-グルコースの言及

【単糖】より

…アルデヒド基を含むものをアルドースaldose,ケトン基を含むものをケトースketoseと呼ぶ。日常生活で最もよく出会う単糖はD‐グルコースD‐glucose(ブドウ糖)でC6H12O6の分子式をもつ。この炭素原子は連鎖状に配列し,最も外側の一つがアルデヒド基となっている。…

※「D-グルコース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android