化学辞典 第2版 「イオン交換体」の解説
イオン交換体
イオンコウカンタイ
ion-exchanger
イオン交換現象を示す物質.また,固定イオンをもつ高分子とも定義できる.イオン交換体は普通は固体であるが,液状イオン交換体もある.歴史的には,まず無機イオン交換体が発見され,ついでフミン酸などを含む有機質もイオン交換現象を示すことがわかり,まず炭を濃硫酸処理して有機陽イオン交換体が製造され,ついでイオン交換樹脂が発明された.無機イオン交換体としては,陽イオン交換体であるゼオライト(NaAlSimO2m+2・nH2O)が発見され,ついで合成されて用いられた.その後,放射能に耐久性のある無機陽イオン交換体として,リン酸ジルコニウム系交換体などが合成された.有機イオン交換体としては,炭質交換体に続いてイオン交換樹脂が出現したが,ほかにセルロースイオン交換体,アルギン酸などがある.そのほか,特殊の用途に用いられるイオン交換体として,弱酸性基,弱塩基性基をもつ樹脂が熱水再生による塩水淡水化に試験され,イミノジ酢酸基[-N(CH2COOH)2]をもつキレート樹脂が重金属の除去に用いられている.液状イオン交換体は,水に不溶の溶媒(ケロシンなど)に溶解する高分子電解質で,陽イオン交換体としてリン酸水素ビス(2-エチルヘキシル),陰イオン交換体としてトリオクチルアミンなどがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報