改訂新版 世界大百科事典 の解説
インダストリアル・キャリア
industrial carrier
生産企業がその生産活動の補助的手段として,もっぱら自ら使用する原料や燃料を輸送するために,またはその製品の輸送手段として,船舶を所有または裸用船して輸送サービスを自給自足する自己運送形態(プライベート・キャリア)の一つ。したがって,この輸送形態は,運賃の受払いがないので,海運市場活動ではない。生産企業が子会社を設立してもっぱら自己の貨物のみを専属輸送させる場合も,このインダストリアル・キャリアの概念に含まれる。このような自己運送形態は,第2次大戦前にも存在したが,戦後の著しい重化学工業の発展にともない,特に石油輸送に重要な役割を果たしている。国際石油資本(メジャー)をはじめ,多くの石油会社は,大量の石油輸送需要を海運企業に提供する一方で,自らも大量のタンカーを保有または裸用船して自家輸送を行っている。
執筆者:織田 政夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報