ウナギ高騰(読み)うなぎこうとう

知恵蔵 「ウナギ高騰」の解説

ウナギ高騰

ニホンウナギ稚魚(シラスウナギ)の不漁で近年、シラスウナギと親ウナギの価格がいずれも高騰している。漁獲量減少は、乱獲に加え生息環境の破壊や海洋環境の変動などが原因と見られ、水産庁は資源管理やシラスウナギの人工生産技術の確立などに向けた対策を進めている。
日本におけるウナギの消費量は、台湾と中国での日本向け養殖の本格化に従って1980年代から急増した。2012年には、約2万トンが主に加工品として輸入され、国内の養殖生産量は1万7377トン、国内天然漁獲量はわずか169トンだった。ウナギ消費の大半を占める養殖は、天然のシラスウナギを捕って育てており、ウナギに卵を産ませて人工孵化(ふか)させる完全養殖はまだ実用化に至っていない。シラスウナギ資源の減少は、ヨーロッパで2000年頃から問題視され、ヨーロッパウナギは07年にワシントン条約の規制対象となった。日本を含む東アジア全域でも、シラスウナギの漁獲量は、比較的多かった06年以降減少が著しく、絶滅の危機に瀕(ひん)している可能性が指摘されている。環境省は13年2月、近い将来に絶滅の危険性が高いとしてニホンウナギをレッドリストに載せ、国際自然保護連合絶滅危惧種に指定するか検討している。
こうした中、03年には1キログラム当たり16万円だったシラスウナギの取引価格は、じわじわと上昇傾向を見せながら11年には87万円となり、更に12年に215万円、13年には248万円にはね上がっている。親ウナギの平均価格も、11年には1キログラム当たり2281円と前年の1.2倍になり、初めて2000円台に乗った。こうしたあおりを受けて、養殖業者や専門小売店、専門料理店の中には廃業を余儀なくされる経営も出ている。

(原田英美  ライター / 2013年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android