国家行政組織法に基づき、環境省設置法により設置された国の行政機関。2001年(平成13)1月の中央省庁再編に伴い、環境庁が省に格上げされて環境省になった。
環境庁は、1971年(昭和46)7月に旧総理府の外局として設立された。主たる任務は、公害の防止、自然環境の保護および整備、その他環境の保全を図り、国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するため、環境の保全に関する行政を総合的に推進することにあった(環境庁設置法3条)。このような任務を達成するために、内部部局として、長官官房のほか、企画調整局、自然保護局、大気保全局、水質保全局が置かれ、審議会等として、中央公害対策審議会、公害健康被害補償不服審査会、自然環境保全審議会などがあり、施設等機関に国立公害研究所(1990年に国立環境研究所と改称)などが置かれた。環境庁長官には国務大臣があてられていた。
環境庁を引き継いだ環境省の任務は、地球環境保全、公害の防止、自然環境の保護および整備その他の環境の保全を図ることである。環境庁時代と大筋では変わらないが、地球環境保全が新たに加えられた。これにより、同省は、地球環境保全を考慮に入れて、国内の環境政策を企画・立案することが求められることになる。所掌事務については具体的には、地球環境保全に関する政策の企画・立案、公害防止のための規制、自然公園の保護・整備、景勝地等の整備、野生動植物の種の保存、自然環境の保全がある。これに、これまで旧厚生省が行っていた廃棄物対策が新たに加わった(環境省大臣官房に設けられた廃棄物・リサイクル対策部が担当)。このように、環境省の任務として、地球環境保全が新たに加えられ、さらに循環型社会形成にかかわる廃棄物・リサイクルに関する事務を担うこととなったことから、従来に比べて環境行政を総合的に推進することが可能となったとはいえる。このほかに、オゾン層の保護、海洋汚染の防止、工場の立地規制、公害防止施設の整備、森林および緑地の保全、化学物質の申請および製造等の規制、化学物質の管理、資源の再利用の促進、河川および湖沼の保全、環境影響評価などに関するものについての事務および事業に関する規制、指針、方針、計画に関することが所掌事務となっている。これらについては、環境大臣が経済産業大臣などと共同して意思決定をすることが求められているものや、環境大臣が意思決定するにあたり、国土交通大臣などとの協議が求められているものがあり、他方で、他の省庁の所掌事務についても、環境保全に関する事務および事業が含まれる場合には、環境大臣と共同して意思決定をすることが求められるものもある。これらのものについては、環境省が省庁横断的な調整機能を発揮することが求められよう。
環境省の組織については、その長は環境大臣であり、中央省庁再編に伴い、大臣のリーダーシップを補佐するものとして、環境副大臣、環境大臣政務官という特別の職が新たに設置された。2017年8月時点では、内部部局として環境再生・資源循環局、水・大気環境局などがあり、審議会等として中央環境審議会、公害健康被害補償不服審査会などが置かれている。また外局として原子力規制委員会、施設等機関として環境調査研修所、国立水俣病総合研究センターなどが置かれている。なお、環境省所管の独立行政法人として国立環境研究所(国立研究開発法人)、環境再生保全機構がある。
[福家俊朗・山田健吾 2017年11月17日]
公害防止,自然環境の保護等環境保全行政の企画・調整・施策の総合的推進を任務とする行政機関。1960年代以降の経済の高度成長の過程において公害問題の多発等環境問題が深刻化し,環境保全のための行政体制の整備の必要性が高まり,1971年7月に総理府の外局である環境庁として新設された。60年代末から70年代初めにかけて欧米先進資本主義諸国において環境行政機構整備の動きがあったが,これとほぼ軌を一にしたものと見られる。国務大臣を長官とし,その内部組織は長官官房および企画調整局,自然保護局,大気保全局,水質保全局からなっている。企画調整局は環境保全施策の総合調整,環境基本計画,環境影響評価,地球環境保全,公害健康被害補償などを担当し,自然保護局は自然環境保全法の施行,国立公園および国定公園関係業務および野生動物保護などを,大気保全局は大気汚染防止法に基づく総量規制基準,排出基準の設定,監視や自動車環境対策,騒音・振動・悪臭などの規制対策を,水質保全局は水質汚濁防止法に基づく総量規制基準・排出基準の設定,監視や地下水の採取規制,廃棄物の海洋投棄,土壌汚染・残留農薬などの対策をそれぞれ担当している。なお,付属機関としては,国立環境研究所,国立水俣病総合研究センターが設置されており,また,審議会としては中央環境審議会,自然環境保全審議会などが置かれている。1997年度末定員1008人。2001年の省庁再編により環境省となった。
執筆者:八木 俊道
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