改訂新版 世界大百科事典 「ウミケムシ」の意味・わかりやすい解説
ウミケムシ (海毛虫)
Chloeia flava
多毛綱ウミケムシ科の環形動物。毛虫のように長い剛毛をさかだてることからこの名がある。本州中部以南に広く分布する。体は紡錘形で,長さ7~8cmくらいであるが,15cmになるものもある。環節は30~40あり,各節の背面には正中線上に楕円形の紫色の斑紋が1列に並び,斑紋の両側には密に枝分れした木の葉状のえらがある。頭部は小さく,紫褐色の5本の感触手,1対の副感触手,2対の眼などがある。各節の両側には背剛毛束と腹剛毛束とがある。背剛毛束の剛毛は白くて長く,先端近くに約20個の鋸歯状の突起が並んでいる。体に刺激を与えると芋虫のように体を丸め,背剛毛を扇状に開く。この剛毛に刺されると炎症を起こし,赤くはれる。腹剛毛も長くて黄色。夕方に水面近くを泳ぐのが見られ,また魚釣りの餌にくいついて釣れることもある。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報