改訂新版 世界大百科事典 「エフライム」の意味・わかりやすい解説
エフライム
Ephraim
パレスティナ中央の丘陵地帯。原義〈肥沃な地〉が示すとおり,豊かな山林地帯で,今日もオリーブその他の果樹が多く生育し,南に伸びるユダ丘陵に比べるとはるかに緑が豊富である。古いイスラエルの伝承によれば,ヤコブの11番目の息子でエジプトの宰相となったヨセフと,エジプトのオンの祭司ポテペラの娘との間に生まれた息子のひとりがエフライムと名づけられた。彼を祖とする部族は,イスラエル部族連合の中でもユダと並んでとくに重要な立場にあり,地名はその子孫がこの地方に移住定着したことに由来すると思われる。モーセの後継者としてカナン侵入当時のイスラエルの民を率いたヨシュア,イスラエル王国成立のころ活躍した預言者サムエル,ソロモンの専制に反抗したヤラベアムはいずれもエフライム族の出身。ソロモンの死後ヤラベアムがダビデ王朝を支持する南王国に対して北王国イスラエルを建てると,エフライムは北王国の別称ともなった。
執筆者:池田 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報