ヨセフ(読み)よせふ(英語表記)Ioseph ギリシア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨセフ」の意味・わかりやすい解説

ヨセフ(マリアの夫)
よせふ
Ioseph ギリシア語
Joseph 英語

イエスの母マリアの夫(婚約者)。彼への言及は、『新約聖書』の福音(ふくいん)書中、イエス誕生および幼児イエスの記事に集中する(「マタイ伝福音書」2~3章、「ルカ伝福音書」2~4章)。またイエスは大工の子ともいわれる(「マタイ伝福音書」13章55節、「マルコ伝福音書」6章3節)ため、ヨセフは大工だったと考えられる。なお中世近世絵画には「聖家族」の画題で、大工ヨセフがよく描かれる。

[定形日佐雄]


ヨセフ(イスラエルの太祖)
よせふ
yôseph ヘブライ語
Joseph 英語

イスラエル太祖。『旧約聖書』の「創世記」37章以下に、ヨセフと彼の兄弟たちの物語が叙述される。彼は、ヤコブの11番目の息子として生まれ、父から特別な寵愛(ちょうあい)を受け、自尊心も強かったので、兄たちのねたみを買い、彼らによって隊商に売られ、エジプト役人の家で奴隷奉公するはめになる(37章)。しかしいくつかの試練を経たのち、ついに彼はエジプトの宰相となり、その国を飢饉(ききん)から救い(39~41章)、父や兄弟たちとも再会する(42~48章)。知恵により運命が切り開かれる、これがこの物語の主題である。

[定形日佐雄]


ヨセフ(イエスの弟子)
よせふ
Ioseph (ho apo Arimathaías) ギリシア語
Joseph 英語

西エフライムの町アリマテア(別名ラマタイム・ツォフィーム)出身の、イエスの弟子。『新約聖書』の福音(ふくいん)書によれば、彼は富裕で、神の国を待望し、善良で正しく、ユダヤ人議会の議員であった。その彼が、ピラトにかけ合い、刑死したイエスの遺体を引き取って懇ろに葬った(「マタイ伝福音書」27章、「マルコ伝福音書」15章、「ルカ伝福音書」23章、「ヨハネ伝福音書」19章)。

[定形日佐雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヨセフ」の意味・わかりやすい解説

ヨセフ
Yōsēph; Joseph

旧約聖書中の人物。ヤコブの第 11子。母はラケル。ヤコブに最も愛されたが,兄弟のねたみを買ってエジプトへ向う隊商に売渡された。当時エジプトは,東方からの侵入者が建てたヒクソス王朝 (前 1720~1570頃) の支配下にあった。ヨセフはさらにエジプトでパロの役人からポテパルに売られ寵用されていたが,主人の妻の言い寄りを拒んだために不義の汚名を着せられ入獄。獄中でパロの2人の役人の夢を解いたのが機縁となってパロの夢も解き明かし8年後の大飢饉を予告,穀物の貯蔵を示唆したために,パロに重んじられエジプト全国の司となった。オンの祭司ポテペラの娘アセナテをめとりマナセとエフライムを得る。大飢饉の年ヤコブの子らもヤコブの意で食糧確保のためカナンからエジプトを訪れた。彼らの再度のエジプト訪問の際ヨセフはみずからを明かし,ヤコブを呼び寄せラメセスの地を父と兄弟に与え厚遇した。 110歳で死にエジプトで埋葬された (創世記 37~50章) 。

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