オキナメジナ(読み)おきなめじな

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オキナメジナ」の意味・わかりやすい解説

オキナメジナ
おきなめじな / 翁目仁奈
yellowstriped nibbler
yellowstriped blackfish
[学] Girella mezina

硬骨魚綱スズキ目メジナ科に属する海水魚。千葉県から九州南岸の太平洋沿岸、山口県の日本海沿岸、五島(ごとう)列島、奄美(あまみ)諸島、南西諸島、小笠原(おがさわら)諸島、台湾などの海域に分布する。伊豆七島ではスカエース、和歌山南部ではウシグレ、沖縄ではシチューとよばれている。体は楕円(だえん)形で中程度に側扁(そくへん)し、ずんぐりしている。体高は高く、体長のおよそ半分。頭部の背縁は目の前方で急傾斜する。尾柄(びへい)は高くて太い。口は小さくて、上唇は分厚く、上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下近くに達する。主上顎骨は眼下骨で覆われる。上下両顎歯は先端で三叉(さんさ)した門歯状で、3~4列に並び、海藻をついばむのに適している。吻(ふん)は丸い。目は小さく、頭部背縁に近接する。鰓蓋(さいがい)の全域が鱗(うろこ)で覆わる。側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は47~53枚、背びれ棘(きょく)部の中央下での横列鱗数は5~7枚であるが、普通は6枚。背びれと臀(しり)びれの軟条部の基部は小さい鱗で覆われる。体、頭部、各ひれは緑黒色で、体側に1本の鮮黄色の横帯があるが、この横帯は成長すると薄くなる。また、釣り上げられるなどして死ぬと不明瞭(ふめいりょう)になる。虹彩(こうさい)は青色幼魚は磯(いそ)の潮だまり(タイドプール)で見られる。成魚は沿岸の岩礁域やサンゴ礁の外縁に単独で生息し、海藻やゴカイ、エビ、カニなどの小動物を食べる。雑食性であるが、海藻類への依存度が強く、縄張りをつくる。最大全長は約45センチメートル。刺身、鍋(なべ)料理、塩焼きなど総菜魚にされるが、特有の磯臭さがあり、それほどおいしくない。

 本種はメジナ属に属する。同属には本種以外にメジナおよびクロメジナG. leoninaがいるが、後2種は鰓蓋の下半分に鱗がないこと、上唇は薄いこと、体側中央部に黄色横帯がないことなどの特徴で本種と区別できる。

[尼岡邦夫 2021年8月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のオキナメジナの言及

【メジナ】より

…多少の磯臭さがあるので,とれたときに血抜きをしたうえで調理することがたいせつである。メジナ類にはほかにクロメジナとオキナメジナがいる。メジナと同じような場所にすむが,やや南方系で,外洋に面したところに多い。…

※「オキナメジナ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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