ガザル(その他表記)ghazal

デジタル大辞泉 「ガザル」の意味・読み・例文・類語

ガザル(〈ウルドゥー〉ghazal)

ペルシア起源をもつといわれるパキスタン、およびインドの準古典声楽。韻を踏んだロマンチックな恋愛の詩が、一般にウルドゥー語で歌われる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ガザル」の意味・わかりやすい解説

ガザル
ghazal

本来アラビア語の古典的な詩型の名称。ペルシア語,トルコ語,そしてウルドゥー語の抒情詩の重要な形式として発展した。音楽用語としてのガザルは,それぞれの言語においてこの形式で作られた古典詩を朗唱する様式,ないしガザル詩型を踏襲する歌の形を意味する。

 北インドとパキスタンおよびバングラデシュでは,ウルドゥー語(ないしペルシア語)の詩を北インドのラーガに基づく旋律にのせて歌うもので,リズムは比較的短い軽快なターラ(6,7,8拍子)による。この様式は13世紀末にアミール・ホスローがもたらした伝統とされている。またマレーシアではガンブースやマルワスのような伝統楽器とギター,ハルモニウムタブラなど外来の楽器を加えた合奏伴奏でガザルが歌われるが,これは本来,西アジアの音楽の伝統で,もっぱらイスラム教徒の間で行われる。なお14~15世紀のイラン・トルコの音楽家アブド・アルカーディルによれば,当時のナウバ組曲)の第2楽章はガザルであって,ここではペルシア語のガザルがもっぱら歌われた。
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百科事典マイペディア 「ガザル」の意味・わかりやすい解説

ガザル

本来アラビア語の古典的な詩型の名称。ペルシア語,トルコ語,ウルドゥー語の抒情詩の重要な形式として発展した。音楽用語としてのガザルは,それぞれの言語においてこの形式で作られた古典詩を朗唱する様式,ないしガザル詩型を踏襲する歌の形を意味する。北インド,パキスタン,バングラデシュでは,ウルドゥー語(ないしペルシア語)の詩を北インドのラーガに基づく旋律にのせて,比較的短い軽快なターラ(6,7,8拍子)で歌い,ラーガより歌詞の表出が重んじられるため,古典音楽に準じるライト・クラシカル(軽古典音楽)に分類される。1970年代後半には,ジャグジート&チトラー・シングらの若い世代のインド人シンガーたちがオーケストラをバックにイージー・リスニング調の旋律にのせて歌ったポップ・ガザルが誕生。
→関連項目カッワーリートゥムリー

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世界大百科事典(旧版)内のガザルの言及

【ガーリブ】より

…インドのウルドゥー抒情詩ガザルghazalの巨匠で,ミールMīrと並び称される文学者。トルコ系の武門を先祖とするアーグラの名家に生まれた。…

【ペルシア文学】より

…しかし9世紀は揺籃期で,10世紀にブハラを都として中央アジアとイラン東部を支配したサーマーン朝が民族文化政策を採り,ササン朝滅亡以来絶えていた宮廷詩人制度を復活させ,ペルシア詩人の保護・奨励に努めた結果,〈ペルシア文芸復興〉が起こり,この時代にペルシア文学の基礎が確立された。〈ブハラ宮廷の華〉とうたわれたルーダキーは10世紀を代表する大詩人で,頌詩(カシーダqaṣīda),叙事詩(マスナビーmathnavī),抒情詩(ガザルghazal),四行詩(ルバーイーrubā‘ī)などペルシア詩の主要な詩形をすべて用いて作詩し,後世〈ペルシア詩の祖〉と仰がれた。この時代の大きな特色は宮廷詩人による頌詩と民族叙事詩の勃興で,ともに時代精神の反映であった。…

【イスラーム】より

…その内容は反逆精神にあふれる愛国詩,人間平等主義に基づく社会思想詩,恋愛抒情詩等に大きく分けられよう。2000曲を超える歌曲の作者としても知られ,ことにウルドゥー語の歌曲形式〈ガザル〉をベンガル歌曲にとりいれた功績は高く評価されている。極度の貧困と家庭の不幸が重なる中で,1942年に発狂,以後没するまで沈黙を守った。…

【インド音楽】より

…芸術性の高い歌謡の一様式としての抒情歌トゥムリーは,クリシュナに対するラーダー姫と牛飼女たちの恋情を歌う。ガザルはウルドゥー語の詩による抒情歌でペルシア起源である。ベンガル地方の吟遊楽士によるバウルも宗教的な心情に発している。…

【インド文学】より

…1687年にムガル朝がデカンを併合すると文学活動の拠点はデリーに移った。ペルシア語詩が中心であったデリーの詩壇はワリーの影響によってアールズー,ハーティムなどの詩人がウルドゥー抒情詩ガザルをよみ始めた。彼らに次いでサウダー,ダルド,ミールらの著名詩人によって首都デリーを中心にして興ったデリー詩派は,18世紀中ごろに黄金時代を迎えた。…

【ガーリブ】より

…インドのウルドゥー抒情詩ガザルghazalの巨匠で,ミールMīrと並び称される文学者。トルコ系の武門を先祖とするアーグラの名家に生まれた。…

【ペルシア文学】より

…しかし9世紀は揺籃期で,10世紀にブハラを都として中央アジアとイラン東部を支配したサーマーン朝が民族文化政策を採り,ササン朝滅亡以来絶えていた宮廷詩人制度を復活させ,ペルシア詩人の保護・奨励に努めた結果,〈ペルシア文芸復興〉が起こり,この時代にペルシア文学の基礎が確立された。〈ブハラ宮廷の華〉とうたわれたルーダキーは10世紀を代表する大詩人で,頌詩(カシーダqaṣīda),叙事詩(マスナビーmathnavī),抒情詩(ガザルghazal),四行詩(ルバーイーrubā‘ī)などペルシア詩の主要な詩形をすべて用いて作詩し,後世〈ペルシア詩の祖〉と仰がれた。この時代の大きな特色は宮廷詩人による頌詩と民族叙事詩の勃興で,ともに時代精神の反映であった。…

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