翻訳|harmonium
金属性のフリー・リードを発音体としてもつ箱状据置鍵盤楽器。発音に必要な送風は,奏者自身が両足を使って操作する足踏式ふいごによる。風がリードを通って吹き出す式のものと,リードを通して風を吸い込む式のものとあり,後者が日本では普及し,〈リード・オルガン〉あるいは単に〈オルガン〉と呼ばれている。アコーディオン,バンドネオンは,発音機構は同じであるが,形態,演奏法が異なるので,この中には含まれない。
19世紀初め,教会のパイプ・オルガンより小型で,音色は類似した楽器の考案がヨーロッパ各地で行われた。さまざまなフリー・リードをもつ鍵盤楽器が試作され,オルグ・エクスプレシフorgue expressif,アエオリーネaeolineなどと名づけられた。フランスのドバンAlexandre François Debain(1809-77)は,それらを集大成した4個ストップの楽器を製作し,〈ハルモニウム〉と命名,1840年に特許を得た。それ以後これが,この種の楽器の一般的名称となった。家庭,教会などで愛用されてきたが,近年電子オルガンに押され,急速に衰退しつつある。
5オクターブ(は~4点ハ),1段鍵盤,ストップ4列,実音の8′(フィート),それよりオクターブ高い4′,実音よりオクターブ低い16′のストップを有するものが標準的である。鍵盤を押すと,ふいごで空気だめにためられていた空気が,リードを通って共鳴溝へ吹き出し音が出る。奏者は,高音部,低音部に分割配置されたストップ・ノブを引き出し,随意の音色を組み合わせる。ひざの左右にある垂直の板を外側に押して風量を増すスウェル装置,ひざの間の板で操作して全ストップに風を送るフル・ストップ,ふいごの風が直接リードに導かれるので,踏み方で音をコントロールできるエクスプレッション・ストップなど種々の補助装置がありそれを操作して,幅広い音楽表現を行うことができる。
19世紀半ばに,吸込み式送風装置,小さめのリードを有する新型のハルモニウムが,フランスのアレクサンドル社で考案され,その後アメリカのエスティ社,メーソン・アンド・ハムリン社で改良され,大量生産されるようになった。アメリカン・オーガンAmerican organ,コッテージ・オーガンcottage organ(イギリス),アレクサンドル・アルモニウムAlexandre harmonium(フランス)などと呼ばれる。これが明治時代に,アメリカ,イギリスの宣教師などによって日本にももたらされ,日本では〈リード・オルガン〉の名で広く普及し,国産品の製造も行われるようになった。〈リード・オルガン〉の呼称が,日本では足踏式フリー・リード鍵盤楽器の総称,あるいはハルモニウムの別名として用いられているのはこのためである。
執筆者:植田 義子
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