日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミール・ホスロー」の意味・わかりやすい解説
アミール・ホスロー
あみーるほすろー
Amīr Khusrau
(1253―1325)
インドのペルシア詩人。中世インドにおける最大の詩人で「インドの鸚鵡(おうむ)」の異名でも名高い。北インドでトルコ系武将を父として生まれる。早くから詩才を発揮し、デリーのイスラム王朝、ヒルジー朝やトゥグルク朝のスルタンに宮廷詩人として仕え、非常に厚遇された。チシュティー派の神秘主義聖者ニザームッディーン・アウリヤの弟子としても名高く、デリーで師の墓の傍らに埋葬されている。長い詩人生活を通じてさまざまな分野にわたり非常に多く作詩した。作品を分類すると、頌詩(しょうし)を主体とした五つの詩集、ロマンス叙事詩5編、歴史叙事詩5編、散文作品である。頌詩集は生涯にあわせて青年時代から晩年に至る作品集で、『青春の贈物』『人生の最中』『完璧(かんぺき)の光』などの題がついている。もっとも高く評価されたのはロマンス叙事詩で、ペルシアの大詩人ニザーミーの『五部作』に倣って1298年から1301年までの間に『光の上昇』『シーリーンとホスロー』『マジュヌーンとライラー』『アレクサンダーの鏡』『八つの天国』を作詩した。歴史叙事詩には『幸運な両星の結合』『勝利の鍵(かぎ)』『九つの天』『トゥグルクの書』などがある。
[黒柳恒男]