ガマの油売(読み)がまのあぶらうり

改訂新版 世界大百科事典 「ガマの油売」の意味・わかりやすい解説

ガマの油売 (がまのあぶらうり)

ガマの油を原料とする軟膏大道で売る香具師やし)の一種。この軟膏は,外傷ひび,あかぎれ,やけどなどの治療に効果があるといわれ,軍中膏として用いられた。ヒキガエル(ガマ)が敵に向かったり,ある刺激を加えられたときに分泌する白い液を収集し薬として売られていたもの。しかし,薬としての効用よりも,江戸時代から明治にかけ,縁日や祭りの街頭でおもしろおかしい口上で客を集めて香具師が販売したその口上のおもしろさがむしろ有名である。口先三寸のたんかだけでする商売だけに,その口上のよしあしによってすべてが決する。数あるたんか売の中でもガマの油売は下級宗教者に扮する〈行者ブチ〉という中に入る。凝った扮装でガマから油をとる一部始終を説き,日本のみならず中国の伝説まで引いてガマの霊力を語り,ついには刀をとり出し,切る切らぬと客を引きつけて膏薬を売る。伊吹山と筑波山が有名で,今にその口上を伝える芸人もいる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のガマの油売の言及

【筑波山】より

…冬季には気温の逆転現象による高温域が標高100~300mの斜面にみられ,これを利用してミカンの栽培が行われ,古い品種のフクレミカンやウンシュウミカンが栽培される。また筑波山のガマは〈ガマの油売〉の口上で全国的に有名で,毎年8月初旬に筑波山神社境内でガマ祭が行われる。【山野 隆夫】
[信仰]
 筑波山は〈西の富士,東の筑波〉と並び称される秀麗な山容で知られ,山頂の二つの峰には筑波男大神(伊弉諾(いざなき)尊),筑波女大神(伊弉冉(いざなみ)尊)の男女2神がまつられ,中腹にその2神をまつる筑波山神社がある。…

※「ガマの油売」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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