日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒキガエル」の意味・わかりやすい解説
ヒキガエル
ひきがえる / 蟇蛙
蟾蜍
toad
両生綱無尾目ヒキガエル科に属するカエルの総称。ガマともいう。世界的に広く分布するのはヒキガエル属Bufoの種で、オーストラリア区を除く全世界に約180種がいる。一般に大形で、皮膚は厚く、乾いている。頭は大きく、目の後方に1対の長楕円(ちょうだえん)形をした耳腺(じせん)をもつ。危険に陥ると耳腺と体表の分泌腺から白い粘液を出すが、これには有毒な物質(ブフォトキシンbufotoxin)が含まれる。そのため、天敵は少ない。地上で生活するが、産卵期には水に入り、多数の卵を1対の紐(ひも)状卵塊として産む。日本には北海道南部、本州、四国、九州にニホンヒキガエルB. japonicus、大東島と宮古島にアジアヒキガエルB. gargarizans、小笠原諸島(おがさわらしょとう)と大東島にオオヒキガエルB. marinusが生息するが、後2種は人為的に移入されたものである。ニホンヒキガエルは体長7~14センチメートル。背面は黄褐、赤褐、暗褐色で、背面のほか体側部や四肢外面に多数の大形不規則斑(はん)がある。色彩や形態の一部にかなり大きな地域差があり、いくつかの亜種に分けることもある。主として山沿いの平地、山間部に生息し、森林内で小形動物を捕食する。1~5月に池、水田、流れのよどみなどで産卵し、卵径は2ミリメートル、卵数は数千個に達する。オオヒキガエルは南アメリカ原産の種で、耕作地の害虫駆除の目的でオーストラリア、ニューギニア島、フィリピンその他の太平洋の島々に移入され、盛んに増殖している。ナタージャックB. calamitaはヨーロッパに広く分布する。体長6~8センチメートルで、後肢が短いため跳躍できず、地上をすばやく走る。
[倉本 満]