ギリシア神殿(読み)ギリシアしんでん(英語表記)Greek temples

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギリシア神殿」の意味・わかりやすい解説

ギリシア神殿
ギリシアしんでん
Greek temples

古代ギリシア人が神の館として建立した建物。普通,長方形の平面で,切妻屋根を架す。素材は最初木材,次いで石灰石 (ポロス) などの軟らかい石材が用いられ,大理石が用いられるようになったのはほぼアルカイック期以後である。その原形ミケーネのメガロン形式で,前室 (プロナオス) と神像を安置する主室 (ナオス) ,後室 (オピストドモス) から成る。神殿の形式には正面に2本の柱をもつイン・アンティス式,前面多柱式のプロステュロス式,内陣を列柱で取巻くペリプテロス (周柱) 式,2重に列柱を配したディプテロス式などがあるが,最も一般的な形式はアテネパルテノン神殿に代表されるペリプテロス式である。またギリシアの神殿は柱の様式からドーリス式,イオニア式コリント式の3様式に区分される。これらのうちドーリス式は最も古くからギリシア本土と南イタリアを中心に発達した。その特徴はエンタシスをもつ柱が直接基壇に接して立ち,シンプルな皿形の柱頭をもつ。現存する遺構としてオリンピアのヘライオン,デルフォイやコリントのアポロン神殿があり,前者は現存する最古の神殿で,その建立は前7世紀中葉と推定される。イオニア式は小アジアのイオニア地方に興った様式で,ドーリス式に比べ柱が高く,細部の装飾は軽快,典雅である。柱頭には卵鏃 (らんぞく) 模様をかかえ込んだ2つの渦巻形を用い,優美な組網模様の柱礎が加わる。アテネのアクロポリスに建つエレクテイオンがその好例である。前5世紀後半にいたりコリント式が誕生する。これはイオニア式の変形で,柱頭がアカンサスの葉形模様で飾られ,一段と優美華麗であり,ヘレニズム期からローマ時代の建築に多い。

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