アカンサス(その他表記)bear's breech
Acanthus

デジタル大辞泉 「アカンサス」の意味・読み・例文・類語

アカンサス(acanthus)

キツネノマゴ科ハアザミ属の常緑多年草総称アザミに似て葉にとげがある。初夏、1.5メートルくらいの茎の先に唇形の花を穂状につける。地中海沿岸の原産。葉あざみ。 夏》
西洋古典主義の建築・美術で、装飾文様に用いた1の葉形。アカントス。→コリント式

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精選版 日本国語大辞典 「アカンサス」の意味・読み・例文・類語

アカンサス

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] Acanthus )
  2. キツネノマゴ科アカンサス属の属名で、同属の種の総称としても用いる。熱帯などに約二〇種がある。多年草または小低木。日本では普通ハアザミをさす。観賞用として栽培される。高さ一メートル内外。葉は大形で長さ約五〇センチメートル。夏、紫紅色または白色の唇(くちびる)形の花が穂状に咲く。《 季語・夏 》
  3. アカンサスの群葉を様式化した装飾モチーフ。ギリシアローマで特に愛好された。コリント式柱頭はその一例。

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改訂新版 世界大百科事典 「アカンサス」の意味・わかりやすい解説

アカンサス
bear's breech
Acanthus

南ヨーロッパ,南西アジア,北アフリカ原産のキツネノマゴ科の耐寒性多年草で約20種がある。葉がアザミに似るため和名をハアザミというが,アザミの仲間ではない。属名のAcanthusはギリシア語のakantha(とげの意)に由来し,葉縁にとげがあることによる。本属の代表種ハアザミA.mollis L.は,長さ50cm以上で羽状深裂し,歯牙があって光沢のある大きい濃緑色葉を根生し,初夏のころ高さ1mをこす花茎を抽出し,白地に紫色脈のある大きい唇形花を長穂状に咲かせる。このほかトゲハアザミA.spinosus L.(=A.montanus T.Anders.),ナガバハアザミA.longifolius Poir.などの数種が栽培される。

 庭園に植栽して観賞されるが,半日陰地でもよく育ち,性質が強く栽培しやすい。植え時は春,繁殖は株分けまたは根伏せによる。栽培地には石灰を施しておくとよい。
執筆者:

大きく上に向かって広がるアカンサスの根生葉は,装飾モティーフの一つとして取り入れられ,建築・工芸の分野ではこのモティーフをアカンサスacanthusと呼んでいる。古代ギリシア,ローマ世界で,柱頭装飾や陶画にさかんに用いられ,以後もヨーロッパ建築・工芸の装飾部分に多用された。ギリシアのコリント式柱頭,コンポジット式柱頭は典型的な例である。東洋でもアカンサスは,例えばインドのガンダーラ美術にみられるインド・コリント式柱頭などに,西方伝来の装飾モティーフとして,丸彫や浮彫の作例を多く残している。
執筆者:

コリント式柱頭の創始者といわれる前5世紀ころのギリシアの彫刻家カリマコスKallimachosには,アカンサスに関する次の伝説が語られている。コリントスのある少女が病死し埋葬された際,その乳母が故人の遺品をかごに入れ,上にタイルをかぶせて墓のそばに供えた。春になってアカンサスが生長してかごの外側を取り囲み,タイルにあたって折れ曲がっている様子を,たまたま見かけたカリマコスは,その新鮮な美しさに感動して,それをデザイン化した新しい柱頭様式をつくりあげたという。花言葉は〈美術工芸の賛美〉。
執筆者:


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカンサス」の意味・わかりやすい解説

アカンサス
あかんさす
[学] Acanthus

キツネノマゴ科(APG分類:キツネノマゴ科)ハアザミ属の総称。多年草あるいは小低木で、ヨーロッパ南部に約20種分布する。代表的な種類にハアザミA. mollis L.があり、庭園用として植栽される。葉はアザミに似て長さ約60センチメートル、幅30センチメートルのつやのあるみごとな根出葉で、8~9月ごろその中心より約1メートルの花穂を伸ばし、紫を帯びた白色の唇形花を穂状につける。ごくじょうぶな多年草であるが、耐寒性がやや劣り、東京地方では戸外でも越冬するが、寒い年は霜よけか土寄せをしないと凍死する。繁殖は4~5月ごろに株分けする。

 本種の葉は造形的で美しく、ヨーロッパでは古代ギリシアおよびローマのコリント式やコンポジット式建築の柱冠の装飾に、アカンサス葉飾りとして図案化されている。

[神田敬二 2021年10月20日]


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百科事典マイペディア 「アカンサス」の意味・わかりやすい解説

アカンサス

地中海地域,熱帯アフリカ,熱帯アジア原産,50〜150cmに生育するキツネノマゴ科の多年草で,20種ほどがある。トゲハアザミは,南ヨーロッパ,西南アジア原産で葉が長さ50cm内外の心臓状で羽状に深く裂け,裂片にはあらい鋸歯(きょし)がある。寒気に強く,栽培は容易で,半日陰の排水のよいところでよく育つ。この葉を装飾モチーフとして用いた模様があり,ギリシア建築,特にコリント式のキャピタルに顕著。後世まで文様として用いられている。そのほか,古くからよく栽培される種として地中海地域,西南アジア原産のハアザミがある。
→関連項目アラ・パキス文様

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカンサス」の意味・わかりやすい解説

アカンサス
Acanthus mollis; acanthus

キツネノマゴ科の多年草で,南ヨーロッパ原産。日本ではハアザミと呼ばれる。アザミに似た深い切れ込みのある羽状の大きな葉は光沢があって常緑。草丈は約 1m,花茎はさらに高く伸び,長い花穂をつける。包葉は緑白色,萼は紫色,花は唇形で淡いピンク色である。大型の植物であるから広い芝生などに植えると,芝とよく釣合って美しい。ローマ時代から庭園に植えられ,葉の図案化されたアカンサス文 (もん) がコリント様式の柱の飾りにみられる。

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世界大百科事典(旧版)内のアカンサスの言及

【文様】より

…しかしこの場合,〈萼〉〈花弁〉といっても,これはあくまで文様の構成を解説する形式語であることに注意しなければならない。同様にパルメット形になった扇形モティーフの場合,花弁は葉形とみられるようにもなるし,ついにはそれはアカンサス葉に変容するが,これらの各単位はすべて現実の植物から離れた抽象的モティーフである。つぎに文様の構成は,まず周囲の空間から孤立した単独モティーフの文様があり,つぎに各モティーフを帯状もしくは平面状に連続して配列する。…

※「アカンサス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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