ケーグラー(その他表記)Ignaze Koegler

改訂新版 世界大百科事典 「ケーグラー」の意味・わかりやすい解説

ケーグラー
Ignaze Koegler
生没年:1680-1746

ドイツ生れのイエズス会の僧。漢名を戴進賢という。1717年(康熙56)に中国へ赴任し,北京で死去した。ドイツの有名なインゴルシュタット大学で数学を教えたことがあり,中国では布教のあいだに中国暦編纂にあたり,25年(雍正3)からは欽天監監正となって,暦計算の指導的位置についた。当時の中国暦である時憲書は《暦象考成》によって計算されていたが,彼はその不備を補うため42年(乾隆7)に《暦象考成後編》を完成した。この書は中国で初めてケプラーの楕円説を採用したもので,日本では江戸時代に大坂天文学者麻田剛立がこの書を研究した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケーグラー」の意味・わかりやすい解説

ケーグラー
Kögler, Ignaz

[生]1680.5.11. バイエルンランズベルク
[没]1746.3.30. 北京
ドイツのイエズス会司祭。中国名,戴進賢。 1716年中国へ渡り宣教に従事。天文や数学の知識により中国で重く用いられた。 25年欽天監正に任じられ,31年には吏部一員となる。 42年『暦象考成後編』を編纂。この間イエズス会の中国日本管区長をつとめた。

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世界大百科事典(旧版)内のケーグラーの言及

【中国天文学】より

…彼は《霊台儀象志》を書き,これらの器械の説明を行った。18世紀半ばの乾隆帝の時代にはI.ケーグラー(戴進賢)は3000個以上の恒星の位置を測定し,《儀象考成》に収録した。しかしイエズス会士は専門の天文学者でもなく,また乾隆帝以降のキリスト教弾圧でイエズス会士の渡来も極度に制限され,やがてヨーロッパ天文学の輸入もとだえるようになった。…

【暦象考成】より

…清朝の康熙帝の末年に少しく新資料を加え,中国人学者が中心になって《崇禎暦書》の再編が行われ,《暦象考成》上・下編ができた。さらに後にドイツ人宣教師ケーグラー(漢名,戴進賢)がケプラーの楕円運動論により太陽,月の運動を論じた《暦象考成後編》を完成した。これらはいずれも江戸時代の天文学者麻田剛立らによって研究され,〈寛政暦〉の基礎となった。…

※「ケーグラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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