暦象考成(読み)れきしょうこうせい(その他表記)Lì xiàng kǎo chéng

改訂新版 世界大百科事典 「暦象考成」の意味・わかりやすい解説

暦象考成 (れきしょうこうせい)
Lì xiàng kǎo chéng

中国訳されたヨーロッパ天文学の叢書。明末に中国に来たイエズス会宣教師アダム・シャール(漢名,湯若望),それに中国人高官徐光啓らの努力でヨーロッパ天文学の諸成果の漢訳が行われ,1634年(崇禎7)に完成した。これが《崇禎暦書》であり,清朝になって公布された〈時憲暦〉の基礎となった。清朝の康煕帝の末年に少しく新資料を加え,中国人学者が中心になって《崇禎暦書》の再編が行われ,《暦象考成》上・下編ができた。さらに後にドイツ人宣教師ケーグラー(漢名,戴進賢)がケプラー楕円運動論により太陽,月の運動を論じた《暦象考成後編》を完成した。これらはいずれも江戸時代の天文学者麻田剛立らによって研究され,〈寛政暦〉の基礎となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「暦象考成」の意味・わかりやすい解説

暦象考成
れきしょうこうせい

中国、清(しん)代の暦算書。『上下編』と『後編』の2種ある。『上下編』は何国宗(かこくそう)・梅穀成(ばいこくせい)により『西洋新法暦書』を再編したもので、清の康煕帝(こうきてい)の勅撰(ちょくせん)事業として編纂(へんさん)された。『律暦淵源(えんげん)』100巻の一部をなすもので、1723年刊行された。ティコ・ブラーエ学説とそれに基づく暦算を述べたものである。『上下編』で推算される清朝の「時憲暦」もしだいに微差を生じるようになり、清の高宗の勅命を受けてイエズス会士ケーグラー(中国名、戴進賢(たいしんけん))らが1742年に編纂した暦法書が『暦象考成後編』である。これではケプラーの楕円(だえん)運動説を太陽・月に取り入れたが、惑星にまでは及ばなかった。『暦象考成』は江戸時代、麻田剛立(ごうりゅう)一派の暦学者により研究され、ことに『後編』は麻田派の力を注いだものであり、「寛政暦(かんせいれき)」の基となった。

[渡辺敏夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「暦象考成」の意味・わかりやすい解説

暦象考成
れきしょうこうせい
Li-xiang kao-cheng

中国,清の天文暦学の勅撰書。前編 42巻 (上編 16巻,下編 10巻,表 16巻) ,後編 10巻。前編は梅こく成 (ばいこくせい。梅文鼎の孫) らの編集で,康煕 61 (1722) 年になり,後編はイエズス会士ケーグラー (戴進賢) らの編集で,乾隆7 (42) 年に成る。前編は明の『崇禎暦書』,清初の『西洋新暦書』の系統ひき天動説をとり,後編は地動説による暦書。日本の寛政暦,幕末の天文暦学の研究に影響を与えた。

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