コミュニケーション的合理性(読み)コミュニケーションてきごうりせい(英語表記)kommunikative Rationalität

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

コミュニケーション的合理性
コミュニケーションてきごうりせい
kommunikative Rationalität

人と人の関係を規定する相互主観的モデルの合理性をさす。人と物の関係に規定された道具的理性ともいうべき目的合理性に対する。目的と手段連関に基づく成果志向的な前者の合理性と異なり,コミュニケーション的合理性は規範と価値の強制なき合意を志向する。 J.ハーバーマス啓蒙の提起した市民的公共性の理念をこの合理性のなかに認め,自己中心的な行為の実効性を重視するシステムの社会認識から,対話による行為規範確立を目指す生活世界の合理化へと視点を移行させた。その意味で彼の試みは批判理論に規範的な基礎づけをもたらしたといえる。

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世界大百科事典(旧版)内のコミュニケーション的合理性の言及

【合理性】より

…たとえば社会人類学の発展によって未開社会の思考や態度が明らかになるにつれ,それを文明社会の合理性よりも低い段階のものと考えていいのかどうか,異質的な文化にはそれぞれ異なった合理性の基準があり,これまで考えられていた合理性基準はむしろ西欧中心主義にすぎなかったのではないか,かりにそうだとすれば,合理性の基準はどうしたら相対主義を脱することができるのか,そういう反省と論議が起こってくる。またJ.ハーバーマスフランクフルト学派の近代的合理性批判を継承しつつ,これまでの目的合理的行為に代わって,相互了解に定位する〈コミュニケーション的合理性〉を,新しい合理性として提起し,その体系化を図ろうとしている。科学,技術,社会の危機に面して,その原理としての近代合理性をどう批判し継承するかが現代の大きな課題なのである。…

※「コミュニケーション的合理性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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