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…船舶による海上輸送業務をいう。
[成立と役割]
海運は古い歴史を有するが,今日の海運市場取引に基づくいわゆる他人運送を専業とする海運業(コモン・キャリアcommon carrier)が海運に支配的地位を占めるようになったのは,19世紀を迎えてからのことである。それまでの海運は,商人が積卸地の市場で売買する自己の商品を輸送するために船舶を所有し運航するという自己運送形態(プライベート・キャリアprivate carrier)にあった。…
… 石油,鉄鉱石,石炭などの工業原料の輸送は不定期船貨物の重要な柱であるが,これらはむしろインダストリアルキャリアとしてとらえるほうが自然である。荷主を特定しない輸送業者をコモンキャリアと呼び,生産者が自己の生産活動のために生産者自体,あるいは自己の支配下の組織に運航させる場合をインダストリアルキャリアと呼ぶ。工業生産規模の拡大に伴い,とくに原料輸送量は飛躍的に増加し,生産の安定を図るうえでも,製品コストに占める輸送コストを低減するためにも,生産者にとってその輸送の主要部分を支配することが重要になってきた。…
…しかし市場が拡大し,輸送量が増加するにつれ,輸送を専門とする業者が現れるようになった。18世紀イギリスでは,輸送業者として営業を始める者に公共運送人(コモン・キャリアcommon carrier)としての責任を負わせ,運送を依頼されたなら理由なく断ってはならないこと,依頼者によって不当な差別をしないこと,合理的な運賃で運ぶこと,安全な輸送をすることなどを義務づけた。こうした規制によって,コモン・キャリアは公衆のために共同利用が可能な輸送機関となった。…
…一般運送は不特定多数の顧客の需要にこたえるところから〈一般〉とされており,運送の引受義務を負っているため,公共運送public transportと呼ばれることもある。一般運送における〈一般〉という用語は英米法における〈コモン・キャリアcommon carrier(一般運送人)〉から転用されたものである。英米においては古くから慣習法common lawが発達し,社会的に一般大衆の利便と必要性の高い職業を〈コモン・コーリングズcommon callings〉と呼んできた。…
※「コモンキャリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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