コール・サック(読み)こーるさっく(英語表記)Coal Sack

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コール・サック」の意味・わかりやすい解説

コール・サック
こーるさっく
Coal Sack

南十字星に隣接する、角度で5度四方に広がった暗黒星雲のこと。たとえば、石炭袋を通して街の灯を見たとき、光はほとんど遮られてしまうが、一部袋の薄いところでは光がちらちら見える。その現象に似て、ほとんど背後の星の光を遮っているが、部分部分で星がちらちら見える暗黒星雲なので、コール・サック(石炭袋)と名づけられている。星の光が見えるところでも1等級から5等級までも光は弱められている。また、星の光をまったく通さない部分には、楕円(だえん)形の非常に暗い斑点(はんてん)が見られるが、これはコール・サックが星の卵(原始星)へ分裂しつつあるものと考えられている。

池内 了]


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改訂新版 世界大百科事典 「コール・サック」の意味・わかりやすい解説

コールサック
Coalsack dark cloud

みなみじゅうじ座にある暗黒星雲。石炭袋とも呼ばれる。星間空間には一辺100mの箱の中に平均1個程度の星間塵がある。その大きさは0.1μm程度である。星間塵の密度が高くなると,後の星の光を弱めて隠してしまう場合がある。そのような場合を暗黒星雲と呼んでいる。コールサックでは,中央部では20等級以上の減光をするので,星はまったく見えない。このような高密度のところでは,10Kという低温で星間分子が多く観測されている。このような低温のガスと星間塵の混合体には,部分的に密度の高いところや低いところがある。そして,まわりの星間空間からの作用があると,密度の高い部分が収縮を始めて,ついにはその内部で星の誕生が始まる。コールサックでも将来の星の誕生を示す密度の高い部分が,電波観測によって見つかっている。なお,はくちょう座(北十字)にある暗黒星雲を類似的にコールサックと呼ぶことがあり,両者を区別するためみなみじゅうじ座のものを〈南のコールサック〉,はくちょう座のものを〈北のコールサック〉ということがある。
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百科事典マイペディア 「コール・サック」の意味・わかりやすい解説

コールサック

みなみじゅうじ座にある暗黒星雲。石炭袋とも。はくちょう座(北十字)にある暗黒星雲をコールサックと呼ぶこともあり,区別するときは,みなみじゅうじ座のものを〈南のコールサック〉,はくちょう座のものを〈北のコールサック〉という。
→関連項目暗黒星雲

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世界大百科事典(旧版)内のコール・サックの言及

【星間物質】より

…〈ダスト雲〉と呼ばれるが,〈暗黒星雲〉というもっと神秘的な名まえもある。その形から〈馬頭星雲〉とか〈コールサック(石炭袋)〉といったおもしろい名まえがついている。このようなとくに星間塵の多いところでないふつうの星間ガスの中にも星間塵は存在し,空間赤化や星間吸収から,1辺が100mの立方体の中に大きさ0.1μmほどの星間塵が1個程度あることが知られているが,星間塵の化学組成を推定するのは困難である。…

※「コール・サック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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