日本大百科全書(ニッポニカ) 「みなみじゅうじ座」の意味・わかりやすい解説
みなみじゅうじ座
みなみじゅうじざ / 南十字座
北半球の中緯度から南の地方でないと見ることのできない南天の星座。春の宵、沖縄地方では南の水平線上に見ることができる。グアム島やハワイではずっと見やすくなるが、オーストラリア付近の緯度では頭上高く昇り詰める。全天でもっとも小さな星座だが、1等星2個、2等星1個、3等星1個と明るい星がまとまって小さな十字形をつくっているため、非常に明るく目につきやすい。しかも南半球の天の川の濃い部分にあるため、いっそう印象を引き立たせている。古くはケンタウルス座の一部に属していたが、近世の初頭にヨーロッパ人が大航海を行うようになると、南半球のもっとも目をひく星群として注目されるようになった。1592年にイギリスのエメリエ・モリノーが製作した天球儀に初めて描き出されているが、星座として正式に独立させたのは17世紀のフランスの天文学者オーギュスティヌ・ロワイエ(生没年不詳)とされている。γ(ガンマ)星とα(アルファ)星を結びその間隔をおよそ5倍延長したあたりに天の南極があり、南半球の真南の方角を知りたいときに役だつ。また南十字座のすぐ南東に接してコール・サック(石炭袋)とよばれる暗黒部があり、天の川の中にぽっかり穴があいたような印象で見えている。
[藤井 旭]