日本大百科全書(ニッポニカ) 「磯部」の意味・わかりやすい解説
磯部
いそべ
三重県中東部、志摩郡(しまぐん)にあった旧町名(磯部町(ちょう))。現在は志摩市の北半分を占める一地区。1955年(昭和30)的矢(まとや)、磯部の2村が合併して町制施行。2004年(平成16)浜島(はまじま)町、大王(だいおう)町、志摩町、阿児(あご)町と合併、市制施行して志摩市となる。旧町域は、志摩半島のほぼ中央に位置し、近畿日本鉄道志摩線、国道167号、志摩パールロードが通じる。名称は古代からの郷名による。全域が、伊勢志摩国立公園(いせしまこくりつこうえん)区域内で、リアス海岸が切れ込んだ的矢湾と、その奥に深く入り込んだ伊雑ノ浦(いぞうのうら)があり、無菌の的矢カキやノリ、ウナギの養殖が盛ん。的矢湾の奥に位置する的矢と渡鹿野(わたかの)島はいまは漁村だが、かつて避難港として栄えた所。伊雑ノ浦の奥の磯部は水田の開けた半農半漁村で、志摩半島の陸路の中心である。伊勢から志摩へ直通する伊勢道路の終点。伊雑宮(いざわのみや)は伊勢神宮内宮(ないくう)の別宮で、祭事は内宮と同じに行われる。なかでも6月の御田植神事(磯部の御神田(おみた))は国指定重要無形民俗文化財で、参観者も多い。
[伊藤達雄]
『『磯部郷土史』(1963・同書刊行会)』