原始星(読み)ゲンシセイ(その他表記)protostar

翻訳|protostar

デジタル大辞泉 「原始星」の意味・読み・例文・類語

げんし‐せい【原始星】

希薄な星間ガスが固まってできたと考えられる、恒星形成の初期の天体。

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精選版 日本国語大辞典 「原始星」の意味・読み・例文・類語

げんし‐せい【原始星】

  1. 〘 名詞 〙 星間物質が凝縮しはじめ、恒星となりつつあるもの。恒星が形成される初期の段階の天体。表面温度は低く、実視等級は非常に暗い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「原始星」の意味・わかりやすい解説

原始星
げんしせい
protostar

分子雲暗黒星雲)の中では重力によって物質が収縮する。その結果、星(恒星)が生まれ始める。収縮を始めてから前主系列に至る間、星は高い光度をもち、活発なふるまいをみせる。この段階にある天体を原始星とよんでいる。

 星の母胎となる分子雲の温度は普通20K(ケルビン)前後である。収縮の際に生ずる重力エネルギーは、初め放射エネルギーとして放出されるが、密度が大きくなるにつれて、放射はガス微粒子による吸収のために内部に閉じ込められるようになり、中心では温度が上昇する。表面の温度は約100~500Kで、かつ濃密なガスと微粒子に包まれているために、中心部は光では見ることができないが、赤外線ではたいへん明るく見える。その周りの母胎の雲では多くの種類の分子の輝線が、赤外線や電波で観測される。このような天体は、これまでに1000個ほどみつかっている。それらに共通する特徴を述べる。

 分子雲の中のコア(密度が高い領域)が収縮する結果、コアの中心は暖かくなり赤外線で光り始める。この段階を原始星とよぶ。原始星の周りには、収縮の際に取り残されたガスや微粒子が円盤状になってゆっくり回転しており、その中では水分子やヒドロキシ基メーザー星間メーザー)が明滅している。回転面と垂直の方向にはガスが激しく吹き出し、周りのガスと衝突して、衝撃波を発生させている。そこではハービック・ハロー天体(原始星から吹き出したガスが水素原子や硫黄(いおう)、酸素、鉄などのイオンを励起して光っている星雲)、水素分子輝線(原始星からの衝撃波が水素分子を励起して近赤外線で光っている星雲)、分子双極流(原始星の自転極の双方向から吹き出す中性分子ガスの流れ)がみられる。このような段階は1万年から数万年の間続く。やがて分子コアの中心の原始星および周りのガス・微粒子の円盤はさらに進化して、原始星の段階から次の段階へ移行する。これから先の進化は、星の質量によって大きく異なった様相を示す。

 大きな質量の星では、星の表面温度が数万Kに達するため、周囲のガスを電離し、H領域とよばれる電波源を形成する。中心部は収縮が急速に進み、主系列星が生まれる。一方、中・小質量の星の表面は、1万Kよりは高くならないためにH領域はできず、また、周りのガスや微粒子はほとんど星の中に落下してしまうために、光や近赤外の天体として見えてくる。これがTタウリ型星で、明るさは太陽の10~100倍である。中質量(2~8太陽質量)の天体は、ハービックAe/Be型星とよばれ、明るさはTタウリ型星のさらに10倍ある。この段階を前主系列期、あるいは、クラスⅡ天体とも称する。さらに進化して中心で核融合反応が始まった星が主系列星であり、夜空に見える星の大半はこの時期にあるもので、これに達した時期を「零歳Zero Age」とする。

 主系列星とTタウリ型星、ハービックAe/Be型星の間に、X線や輝線の弱い天体がみつかっている。この弱輝線Tタウリ型星(クラスⅢ天体)は、ガスや微粒子の円盤が吹き払われると同時に、一部は惑星系に変化しつつある時期と考えられる。原始星とは、分子雲の中で、「零歳」の誕生前の胎児として活発な活動を行いつつ、惑星系形成を行っている段階の天体をさすといえよう。

[佐藤修二]

『藤井旭著『藤井旭の天文学入門』(1990・誠文堂新光社)』『高原文郎著『宇宙物理学』(1999・朝倉書店)』『柴田一成・福江純・松元亮治・嶺重慎編『活動する宇宙――天体活動現象の物理』(1999・裳華房)』『藤井旭著『星の一生――解き明かされる星ぼしの謎』(2002・偕成社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「原始星」の意味・わかりやすい解説

原始星 (げんしせい)
protostar

星間空間にあるガスは,自分自身の重力(万有引力)で収縮しはじめ,分裂し,さらに収縮を繰り返して恒星になる。こうして生まれたばかりの星を原始星という。星間空間にあるガスと星間塵の雲は,星に照らされて散光星雲として見えたり,あるいは背後の星を隠して暗黒星雲として観測される。とくに密度の高いガス雲の内部では,水素分子,一酸化炭素や,より複雑な有機分子が形成されていて,電波でわかる雲として観測される。ガス雲が収縮を始めるきっかけとなるものは,ガス雲の衝突や,近くで起こった他の星の爆発による衝撃などである。ガスが収縮して星になるまでの過程は,数値シミュレーションによって研究されている。その結果によると,原始星は生まれるときに,一時期,きわめて明るくなる。例えば太陽程度の質量の星では,現在の太陽と比べて100~1000倍の明るさで,1000~100年間くらい輝いたと考えられる。次いで星は赤い色を保ちながら,現在の太陽程度にまで暗くなる。その後はあまり明るさを変えずに,しだいに黄色い星になる。ついに星の中心部で原子核反応が始まると,星は現在の太陽のような状態(主系列星)に落ち着く。このような原始星の収縮過程は,1962年に林忠四郎によって提唱され,ハヤシ・フェーズHayashi phaseと呼ばれている。生まれたばかりの星として観測されている星には,次のようなものがある。オリオン大星雲の中には,赤外線のみで見える星があり,クラインマン=ローKleinmann-Low星雲と呼ばれている。同じ星雲中に,1947年の写真には写っていないが,54年の写真には写っている星があり,ハービッグ=ハローHerbig-Halo天体と呼ばれている。オリオン座FU星も同様な天体である。ハヤシ・フェーズの終りに近い星として,おうし座T型星と呼ばれる種類の星がある。これは非常に若い星団の中にある星で,まだ落ち着かず,星の表面で大規模なフレアを繰り返している。
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知恵蔵 「原始星」の解説

原始星

誕生して間もない星。恒星の誕生は星間ガスの重力収縮に始まる。ガスが圧縮され高温になり、赤外線や電波を放射するような段階の星が原始星。周囲のガスは円盤状に回転しながら恒星に降り積もり、原始星は成長する。原始星の周囲にはガスや塵の円盤が作られ、円盤に垂直双方向に双極流と呼ばれるガスのジェットの放出が見られる。このように恒星の誕生は厚いガスに包まれているため、可視光で観測することが困難だが、赤外線や電波によって降着円盤やジェット流が観測されている。

(土佐誠 東北大学教授 / 2007年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「原始星」の意味・わかりやすい解説

原始星
げんしせい
protostar

自らの重力で収縮して星になりつつある,チリを含む星間ガスの塊。収縮によってしだいに高密度になることで,光が自由に出てこられなくなり,内部の温度が上昇していく。表面から放出されるエネルギーによって,周りのチリが温められ,赤外線を放出するので,赤外線星として観測される。さらに収縮し,中心部で核融合反応が始まることで,主系列星へと進化する。

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百科事典マイペディア 「原始星」の意味・わかりやすい解説

原始星【げんしせい】

生まれたばかりの星。宇宙空間のガス雲は,近くの星の爆発による衝撃やガス雲どうしの衝突などをきっかけとして収縮を始め,分裂・収縮を繰り返して恒星になる。原始星として観測されているものには,オリオン星雲中のクラインマン=ロー星雲,ハービッグ=ハロー天体などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の原始星の言及

【恒星】より

… 太陽は質量,光度,半径などいろいろな点で標準的な恒星であるが,一般の恒星は質量,年齢,単独星か連星かおよびこれらの組合せでさまざまな姿を示す(表1)。恒星は高密度の星間雲の凝縮と分裂によって生じ,誕生したばかりの星は原始星と呼ばれる。これらは,温度が低く赤色で,光度も半径も大きい超巨星であるが,その時期は短くごくふつうの安定な状態にある主系列星へと進化する。…

※「原始星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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